いわゆるサブプライム・ショックの影響が、日本にも飛び火し、大和生命保険が破綻に追い込まれたことは記憶に新しい。そのほか、地域密着型の金融機関における経営の先行きも、楽観視できない状況へ追い込まれている。そこで、国内において金融機能強化法の「復活」を待望する声がにわかに高まり始めた。

金融機能強化法とは、2004年に施行されるも、2008年3月で期限切れを迎えた法律である。おもに地方銀行や信金、信組、労金など、経営力に疲弊がみられ、「貸し渋り」「貸し剥がし」が社会問題となっていた地域金融機関に対し、公的資金を注入する根拠となっていた。

金融機能強化法における「国による資本参加」の基準

金融機能強化法における「国による資本参加」の基準

05年に改正預金保険法により解禁された、ペイオフによる公的資金注入と混同されがちだが、ペイオフは経営破綻が生じてからの事後処理的・消極的性格を持つ制度である。

対して金融機能強化法は、事前予防的性格を帯びる。破綻を待って整理するより、いったん公的に援助し、再生させた金融機関から債権回収するほうが合理的だからだ。国は注入枠として2兆円の予算を組んでいたが、実際には3年半の間に、紀陽ホールディングスへ315億円、豊和銀行へ90億円と、わずか二度の注入があるのみだった。

そうして、08年3月28日「延長は必要なかろう」という金融庁の判断のもと、金融機能強化法は静かにその機能を停止した。同法が定める資金注入制度そのものの構造に問題があったわけではない全体的な景気が長期回復傾向にあった時期と重なったほか、外資系ファンドなど民間からの資本支援例が増えていたことなどが、金融機能強化法の出番が少なかった理由として挙げられる。

もっとも、昨今の世界的な金融危機にあっては状況が異なる。過小資本に陥った金融機関は、このピンチを増資で切り抜けようとするかもしれない。とはいえ、非上場の地域金融機関においては、個別の関係先や縁故先をあたることになるし、上場していても、増資が株式価値を一段と希薄化させるため、既存株主への理解を得ることが求められる。いずれにせよ、資金調達の困難に直面することだろう。