ぶつかりあう複数の要請を調整するのは、法を制定・適用するうえでの要である。たとえば刑事手続きにおける、「真実発見の必要性」(事実を明らかにするための取り調べなど)と「被告人の人権保障」の衝突は一筋縄ではいかない問題であり、刑事訴訟法において両者の調整が図られている。放っておけば偏ってしまう現象を人為的に修正することも、法律に課せられた重要な役割だ。法律には「バランス」が必要なのだ。
同様に、「観光」と「環境」のサジ加減も、決して一筋縄ではいかない。地域の経済効果を上げようと、観光事業を推進して多くの観光客を全国から呼び寄せようとすれば、過去の大規模リゾート開発と変わらなくなり、地元の貴重な自然環境や伝統文化が犠牲になってしまう。そうなれば、観光資源を持続可能な形で保全できなくなるため、いずれは事業そのものも立ちゆかなくなる。かといって、環境保全策を強めれば強めるほど、説教くさい窮屈なツアーとなり、休暇を楽しむ場所としては魅力を削がれる結果となってしまう。早い話が、観光地として面白くなくなるのだ。
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