「懲役○年、執行猶予○年の有罪判決が……」と、テレビや新聞などで、判決主文の報道がなされることがある。特に社会的地位の高い被告人、重大犯罪を犯した被告人に対しては、刑の執行を猶予し、即時に釈放することに関する是非の議論が交わされたりすることも多い。
ただ、執行猶予の内容に2種類あることを皆さんはご存じだろうか。その2種類とは「保護観察つきの執行猶予」と「保護観察なしの執行猶予」である。
刑罰は、いずれ受刑者を社会復帰させることを前提に科される。受刑者の生命を絶つ死刑を除いては。無期懲役とよばれる刑罰であっても、20~30年経てば「仮釈放」という形で刑務所の外に出す運用となっている。どんなに凶悪な犯罪を行った者であろうと、いずれは誰かの隣で生活する日がくるのだ。そして、仮釈放の対象となった者も保護観察を受ける。
執行猶予の場合も、仮釈放の場合も、「実社会のなかで立ち直らせる」ため、その者に遵守事項を課し、生活態度を改めさせていくのが保護観察の意義といえる。この営みを最前線で担当するのが、全国で約5万人が従事する民間ボランティアの「保護司」である。また、法務省の地方支分部局である保護観察所の職員も協働している。
まっとうな道を踏み外した者は「刑務所のなかで立ち直らせる」のが本来的であるようにも思える。しかし、現在、わが国において刑務所の収容人員は飽和状態にあるし、いわば「畳の上での水練」のごとき刑務所内での指導とは一線を画する効果が、社会内処遇(保護観察)には期待されている。