近ごろ、映画の上映前のCMに混じって「劇場内での映画の撮影・録音は犯罪です」「ノーモア、映画泥棒」という啓発メッセージが流れているのを見かけたことはないだろうか。
罰則つきの「映画の盗撮の防止に関する法律」が2007年8月30日に施行され、まもなく丸1年が経過する。 劇場の客席における盗撮が禁じられる対象は、封切りから8カ月以内(先行上映、先行オールナイト、無料上映の試写会を含む)の商業映画である。典型的な映画館のみならず、公民館や多目的ホールなどでの上映も対象となっている。
また、この法律にいう「盗撮」とは、録画と録音(録音のみを含む)を指す。たとえば携帯電話などで名シーンの写真を1枚撮る程度なら、マナーの問題はともかく、法規制の対象にはならない。
というのも、映画業界の狙いが、急速に出回る「海賊版」の撲滅にあるためだ。今、海賊版といえば、暴力団の資金源ともみられる無断コピーのDVDばかりではない。ウィニーなどのファイル交換ソフトを使い、不特定多数人のために無断でインターネット上に置かれる動画データも厄介な存在である。
デジタル撮影技術やインターネット通信技術が劇的に進化したことによる「負の側面」として、精巧なコピーが即座に世界へ広まるようになった。ロードショー期間の真っ最中に海賊版が出回っては、映画会社が経営基盤とするビジネスモデルは大きな打撃を受ける。映画製作に投下した資本が回収できなければ、次の作品もつくれず、映画監督・脚本家・役者へもさらなる被害が波及する。海賊版を水際で阻止しようと試みる、映画盗撮防止法の必要性はいちおう理解できる。
ただし、このような規制のあり方が許容されるかどうかは別の問題というべきだ。