規制の目的が正当であっても、規制手段が正当であるとは限らない。

2008年9月の臨時国会において審議が予定されている、児童買春・児童ポルノ禁止法の改正案もその一例だ。

改正のきっかけの1つとなったのは、07年7月、ある元小学校教諭の男に言い渡された、執行猶予つきの有罪判決。交通事故で死亡した児童や幼児、計6人の写真をホームページに載せた行為が、刑事事件として立件されたのだ。

事故死した子どものあどけない写真に、被告人が不謹慎なコメントをつけていた事実も、各メディアで取り上げられた。また、体操服姿の女児の画像なども、ともに掲載されていたという。

しかも、この判決を受けた被告人は、刑の執行猶予中、運動会が行われていた小学校の校庭でカメラを持ってうろついていたところを、建造物侵入の容疑で再逮捕された。性犯罪は再犯率が高いといわれ、それは小児性愛も例外ではない。

このように性犯罪として処断されてもおかしくない行為をしたにもかかわらず、当該ホームページの作成に関して検察側の起訴状に記された罪名は「著作権法違反」。写真の無断転載を裁かれたにすぎない。被告人がポルノ写真をホームページに掲載したわけではなかったからだ。

被告人のような小児性愛の傾向がある者は児童ポルノを所持していることが多いが、現行法で所持は禁止されていない(児童ポルノを頒布・販売するなどの行為は禁止されている)。そこで犯罪の構成要件に「所持」までを含め、懲役1年を最高刑として罰しようというのが、与党の改正案の内容だ。今年11月に「子どもの商業的な性搾取に反対する世界会議」の会合が開かれることもあり、それまでに改正案を可決、成立させて日本国の取り組みをアピールしたい模様である。