円滑化法が誇る「目玉制度」は3つ。「金融支援」「相続税の納税猶予」「遺留分に関する民法の特例(平成21年3月1日から施行)」である。

経営継承円滑化法の対象となる企業規模

経営継承円滑化法の対象となる企業規模

企業の後継者は、経営能力、リーダーシップ、信用などあらゆる面で、先代に遠く及ばないのが普通である。なので、引き継ぎの直後はいったん企業体力が低下してしまう。そして、会社の所有と経営が一致した非上場企業では、流動的な資産が少なく、企業体力の低下が、財政的な逼迫状況を引き起こす可能性が高い。

そこで、企業承継に際しての融資では、中小企業信用保証協会の保証限度額が倍になり、よって金融機関の融資枠も拡大されることになった。ただ、融資されるかどうかの判断は別の問題だ。銀行などの「貸し渋り」が社会問題化されている昨今、たとえば「融資実現の努力義務」規定ぐらいは、法文のなかに入れて担保する配慮があってもよかった。

また、相続税のうち8割の納付を猶予する制度も、今年度中に遅ればせながらスタートする予定。先代社長の死去に伴う承継ならば、当該会社や後継者の経済的負担は相当程度軽減されるだろう。

ただし、先代の死去だけが経営の承継開始原因でないのは当然のことで、体力や判断能力の衰えを理由にしての引退もありうる。相続が始まっていないにもかかわらず、相続税を云々しても仕方がない。そこで、贈与税に関する同様の猶予制度は導入できないのかどうか、真剣に検討すべきであると考える。

経営承継をバックアップする制度が充実したなら、あとは後継者のチャレンジ精神と従業員の理解があれば、その中小企業は命拾いし、新社長の個性に基づく瑞々しい事業展開も期待できよう。

(ライヴ・アート= 図版作成)