2006年の道路交通法改正で駐車違反の取り締まりが強化されたが、これに伴い、「弁明」制度ができたことをご存じだろうか。改正法では、違反者が出頭しなかった場合、車の使用者に仮納付書と弁明通知書が送付され、弁明が認められれば違反金を払わずに済む。
とはいえ、現状、弁明書に「腹痛でトイレに行っていたためやむをえず駐車した」と書けば簡単に弁明が認められるというわけではないようだ。仮にこれが認められるとすれば、虚偽の弁明が続出することも予想されるから、簡単には弁明が認められない理由もわからなくはない。
しかし、たとえば東京23区内なら、整備された公道の99.9%以上が「駐車禁止」に指定されている。また、予測できない腹痛は誰しも経験のあるところだろう。結果、やむをえず駐車禁止場所に車を停めるということは誰でも現実に起こりうる。これも駐車違反として取り締まりを受けるのだろうか。
「争う余地も十分にある」と答えるのは、長年にわたり交通関連事件を数多く手がけてきた高山俊吉弁護士。犯罪の成立を争う法的根拠のひとつとして、緊急避難(刑法37条)がある。「現在の危難を避けるため、やむをえずにした行為は処罰しない」という条文である。
ただし、この場合の「やむをえず」とは、「ほかの手段が残されていない状況」という厳格な条件を指す。つまり、緊急避難を根拠にして、法廷で無罪の声を聞くには、みずから証拠を集めて、ほかに方法がなかったことを証明しなければならない。勝訴したとしても、それに必要な労力や費用は駐車違反の罰金を上回る可能性が高い。
では、裁判によらずに、駐車違反を取り消してもらうことはできるのだろうか。