自転車は、道路交通法上では軽車両に区分される。当然、酒を飲んで乗れば飲酒運転。正常な運転ができぬ状態で運転したともなれば5年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科せられる。

しかし、一般には「自転車で人にぶつかったところで、たいしたことにはならない」と思っている人が多いのではないだろうか。もし、そうだとすれば、とんでもない思い違いだ。

図を拡大
死亡事故で約7000万円支払う場合も…

自転車が歩行者にぶつかり、歩行者が死亡したという事故は、毎年わずかではあるが起きている。民事訴訟の過去の判例では、損害賠償の最高額が約7000万円という事故がある(表参照)。

この事故では、片手運転で坂道を下ってきた自転車が、交差点を横断中の歩行者に衝突し、死亡させた。裁判所は、自転車側に100%の過失があると認め、損害賠償を命じている。

自転車といえども車両なのだから、自動車と同様に罰則もあり、人に損害を与えれば賠償請求の対象となる。しかも、困ったことに周知のとおり、自転車には車のような自賠責保険がない。そのため判例の事故では、賠償金の一部が労災保険で填補されたものの、被告はほぼ全額に近い賠償金を支払うことになった。

歩道上の事故に多い自転車の過失100%

自転車による歩行者の死亡事故のうち、飲酒運転によるケースは実際にはほとんどない。しかし、ありえない事故ではない。

警察庁の統計によれば、自転車の関係する交通事故に遭った人は2010年で15万1626人に上り、このうち死亡者は658人。そのほとんどは対自動車の事故だ。自転車事故の件数は、04年をピークに減少してきているが、自転車対歩行者の事故はというと、全体に占める割合こそ低いものの、04年と比べると増加傾向にある。

その原因のひとつとして、自転車の通行区分のあいまいさがあげられると思う。