混雑した通勤電車のなかで痴漢に間違えられて迷惑防止条例違反で訴えられ、揚げ句の果てに新聞に実名入りで報じられてしまう。「私はやっていない」と訴えても、会社の上司や同僚はよそよそしい態度をとる。親しかった近所の人も白い目で見るようになった。家では「お父さんのせいでいじめられる。学校に行きたくない」と子供が言い出す始末。でも、慰めの言葉をかけることもできない……。
弁護士 荘司雅彦●1958年生まれ。81年東京大学法学部卒業。金融機関勤務を経て、91年に弁護士登録。幅広く多数の事件を扱う。著書に『小説 離婚裁判』『荘司雅彦の法律力養成講座』など多数。
「新聞沙汰」とはよくいったもので、マスコミの影響力はとても大きい。弁護士である私も、新聞やテレビで痴漢など犯罪報道を見聞きすると、「何て悪い奴だ」とつい思ってしまう。逮捕されただけでは罪は確定しておらず、無罪の推定をしなくてはいけないことを頭のなかではわかっているにもかかわらずにだ。
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