仕事上の人脈を広げるため、異業種交流会やパーティーなどに顔を出し、自らのメールアドレスを記した名刺を配りまわったばかりに、後になって、事業内容を宣伝するメールや営業目的のメールを送りつけられて、辟易した経験のある読者もいるだろう。このように、一方的に営業メールを送りつける行為に違法性はないのだろうか。

迷惑メールの受信頻度

迷惑メールの受信頻度

実は昨年12月、迷惑メールの規制に関する2つの法律(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律と特定商取引に関する法律)が改正され、広告・宣伝目的のメールを送信する際には、原則として、相手方の同意を得ることを必要とする「オプトイン規制」が導入された。すると、冒頭の例で送られる営業メールは違法と判断されてもよさそうである。

しかし、弁護士の岡村久道氏は、「このケースの場合、営業目的でメールを送信する行為に、法律上の問題はないと考えられる」と話す。その理由は、「メールアドレスを載せた名刺を相手に手渡した時点で、広告・宣伝目的を含むメールの受信に同意したと評価することができるから」。

つまり、パーティーなどで、メールアドレスを載せた名刺を直接会って手渡すということは、今後、相手から営業メールを送られることにも「同意した」とみなされるということである。営業メールを受け取りたくないのであれば、アドレスを省いた名刺を別に作って用意しておくしかない。

オプトイン規制は、ネット上で買い物する際などにも適用される。しかし、同意したつもりもないのに、買い物をした後で広告メールが送られてくるという声は多い。大手のショッピングサイトでは、形のうえでは広告メールの受信に同意させたうえでメールを送信しているが、「一部の運営会社では同意の取り方に不十分さが目立つ」と岡村弁護士は懸念する。同意を取るチェックボックスが画面の外にあったり、初めからチェックが付けられていたりして、利用者が十分に注意しなければ、知らないあいだに同意「させられてしまう」ケースがあるからだ。これは、現在の規制の事実上の抜け穴になっている。

さらなる問題は、最初から悪意で、受け手の不同意などお構いなしに、不特定かつ極めて多数のアドレスへあて、手当たり次第にメールをばらまく悪質な輩の存在である。