保険料値上げが続いている
最近、ドイツの医療保険について、「慢性的破産状態」、「壁に向かって突進」などといった報道が相次ぐ。現在、国民はこれまでにないほどの高額の保険料を支払っているにもかかわらず、それがさらに上がっていく。
保険料は昨年(2025年)も引き上げられたが、以前、それを決めた時、ラウターバッハ保健相(社民党)は、「2年続きの値上げはないだろう」と言った。しかし、あに計らんや、今年も医療保険会社の半数は値上げを断行。特に、個人が任意に追加している保険の料金が、2年続きで大幅に上がった。
ドイツは皆保険の国で、国民は収入があってもなくても、必ず医療保険に加入する義務がある。生活保護受給者や低所得者の場合、保険料は補助、あるいは免除で保険に組み込まれ、最低の医療は保証される。昔、私がドイツで留学生だった頃、大学の学費はタダだったが、法定の最低限の医療保険だけは支払った。
ところが、連邦会計監査院によれば、医療保険の収支決算は、24年が66億ユーロのマイナス。内部留保金も底をつきかけているという。
それどころか、コンサルティングのデロイト社の予測では、赤字額は30年には900億ユーロ、50年には3000億ユーロという信じ難い数字が出ている。
戦後長らく安定的に機能してきた医療保険制度が、なぜ、今になってこのような壊滅的状態に陥ったのか?
健康なのに保険料を納めない人たち
破綻の原因を一口で言うなら、異常な速さで進む少子高齢化や、保険料を納めていない外国人の急増など、状況が刻々と変わったにもかかわらず、それに対して責任ある対応をする政治家が存在しなかったことだろう。
ちなみに200億ユーロあった留保金は、第4次メルケル政権のシュパーン保健相(キリスト教民主同盟)が、「医療保険は銀行ではない」と言って急激に切り崩しに掛かった結果、現在46億ユーロにまで減っている。
たとえ、当時、コロナ対策で医療費がかさんだとはいえ、保険会社サイドとしては、無理な出費を押し付けられ、留保金をここまで減らすことを強いられたわけで、当然、政府のやり方には不満を持っている。
医療保険会社の支出額は年々増えており、昨年は3410億ユーロで、前年より220億ユーロも増した。
中でも大きな割合を占めているのが大病院のコストで、24年にはこれだけで1020億ユーロが費やされた。
その他、医薬品に550億ユーロ、各クリニックへの支払いが500億ユーロ。
もちろん、高齢化の影響もあれば、医学の発達で治療の可能性がどんどん広がり、それが医療費を押し上げているということもあるだろうが、しかし、この調子では、ちょっとやそっと保険料を上げても追いつかない。
そもそも医療保険のメカニズムとは、健康で働いている人が一定のお金を積み上げ、病気の人を助け、また、自分が病気になった時に助けてもらうというものだ。なお、一家の働き手が保険料を納めていれば、その扶養家族がこのメカニズムに組み込まれるのも、当然のことだった。
ところが今、保険金を全く納めずに保険医療を受けている人たちが激増している。

