あなたは予算書・決算書を正しく理解できているだろうか。「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」では、そのポイントを8つのパートにわけて解説した。第8回は「効果抜群の期末対策」について――。
「節税」のため、決算を正しく「悪く見せる」
金融経済用語に「ゴーイングコンサーン」という言葉があり、継続企業と訳されます。会社は永遠に続いていくということを仮定したもので、期末決算は、それを1年という単位で無理やり区切ったものです。この区切りを逆に利用して、売り上げとコストを前後のどちらの期間に計上するのかを調整するのが決算対策です。
もちろん会計基準にのっとって行うわけですが、その期の業績を悪く見せる、あるいはよく見せるという選択肢があるということです。
まず、決算を悪く見せる場合ですが、その理由はおおむね「節税」です。実は節税には、多額の売上高に匹敵する財務的効果があります。その会社の利益率が1%だとすると、1万円を稼ぐには100万円売り上げる必要がありますから、1万円の節税は100万円の売上高に匹敵します。
では、利益を圧縮するにはどのような方法があるでしょうか。例えば、2019年度以降に予定しているパソコン等の30万円未満の少額の事務機器を前倒しで購入するとか、経営セーフティ共済や生命保険に加入してもいいと思います。
また、新たな顧客創造を狙って、広告宣伝費を普段は出さない媒体に使うということも効果的ではないでしょうか。
ただ、節税のためだけに赤字決算にするのは、今では考えものです。法人税は、18年4月から賃上げや設備投資の拡充を条件に、最大20%程度まで減税されるなど、減税のトレンドにあります。しかし、所得税は、2020年から年収850万円超の人が増税になるなど、増税のトレンドにあると言えるでしょう。
こうしたなか、オーナー経営者の場合、赤字決算にして支出を抑えたとしても、補填のために、所得税をたくさん払った自分の預貯金を会社に注ぎ込まなければいけなくなるのです。