とはいえ、仕事にやる気がないわけではなく、「仕事にはやりがいが必要だと思う」「仕事を通して人間として成長したい」という人も7割を超え、仕事に向き合おうという姿勢が見て取れます。

図1-5、1-7、1-8:博報堂キャリジョ研『働く女の腹の底 多様化する生き方・考え方』より。

ただ、ワークライフバランスを実践する中でも、男女で仕事への向き合い方には違いがあるのではないでしょうか。従来、生活のメインミッションとして仕事をとらえていた男性にとっては、プライベートの充実を図るとしても、そのメインミッションを二つ、ないしは三つに切り分ける「ケーキカット型」のバランスのとり方をしている人が多いようです(だから仕事が忙しいと他の取り分はグッと減り、妻や彼女に怒られることに……)。

対して、仕事を元々生活の一要素としてとらえている女性にとっては、ブレスレットの「チャーム(飾り)」みたいなもので、仕事、友達、趣味、恋愛など、それぞれのチャームをバランスよくつけていたいし、個々のチャームもキラキラ輝くように、その中で最善を尽くそうとがんばっているのです。

このとらえ方の違いは、職場で「やる気」のありなしのように受け取られがちですが、実は男女の根本的なとらえ方の違いと言えるのではないでしょうか。

「あみだくじキャリア」が生む不安

一方で、仕事に前向きとは言え、上には上がりたくないのがキャリジョの本音。「将来、昇進昇給したい/偉くなりたい」は31.4%、「管理職になりたくない」は52.7%と半数を超えます。出世意識の低さについては、男性と比べて、女性のほうが自分に自信がない人が多いことが理由としてよく挙げられます。それに加え、女性のキャリアパスは、結婚・出産などのライフコースの変化が絡み、複雑です。

さらには実際に両立できているいわゆる「ロールモデル」も身近に少ないのが現状。調査でも「参考になる生き方をしている人(ロールモデル)が会社にいる」は全体の23.5%と、仕事関連の64項目中ワースト5位に入るほど低いのです。

女性の場合、ゆるキャリからバリキャリまでたくさんのキャリアパスがあって、会社の都合だけでなく、パートナーの都合、親も含めた家庭の都合など、自分の意思では思い通りにならない要素で、途中でどこのキャリアパスに流されるかわからない。まるで「あみだくじ」のような不安感があるように思います。

ただ、ロールモデルの有無については、年代別に見ると、25~29歳が19.4%、30~34歳が18.9%と、ともに19%前後なのに対して、20~24歳は31.6%と10ポイント以上高め。今の世の中の変化や、子育てをしながら働く女性たちのがんばりのおかげで、ようやくロールモデルができ始めているのかもしれません。

博報堂キャリジョ研(はくほうどうきゃりじょけん)
広告会社博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性マーケティングプランナー、プロモーションプランナー、メディアプロデューサーたちが、2013年に立ち上げた社内プロジェクト。 キャリア(職業)を持つ、特にお金と時間を自分のために使いやすい子どものいない女性を「キャリジョ」と定義し、有識者ヒアリング、女子会形式の定性調査、インターネットによる定量調査などを通じて「キャリジョ」を研究している。
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