※本稿は、博報堂キャリジョ研『働く女の腹の底 多様化する生き方・考え方』(光文社)の第1章「キャリジョの仕事と恋愛・結婚」を再編集したものです。
「したい」と「できる」のジレンマ
パソコンやスマートフォンさえあれば、どこでも仕事ができる時代になり、仕事への関わり方も大きく変わりました。加えて、SNSの普及によって、個人でも簡単に発信ができるようになったので、自分の興味分野を自分なりの視点とセンスで伝える仕事が今までにない職業として生まれています。例えば、動画共有サイトYouTubeにオリジナル動画を投稿し、多くの人の支持を得ているユーチューバー、Instagram内で、多数のフォロワーを持ち、大きな影響を与えているインスタグラマーや、常に旅をし、自分らしい旅を発信し続けているプロトラベラー。「仕事は生活のため、好きなことは趣味で」と割り切ることなく、「趣味を仕事に」できるチャンスも広がりつつあるのです。
化学メーカーのクラレが毎年行っている新小学1年生になる親子への調査『「将来就きたい職業」と「就かせたい職業」アンケート』は、こうした時代変化を顕著に表しているように思います。2017年、女の子の就きたい職業は1位がケーキ屋・パン屋、2位が芸能人・歌手・モデル、3位が看護師と並びます。ケーキ屋・パン屋は19年連続1位と不動の人気で、看護師は10年ぶりのベスト3入り。ベスト5だけ見ると、10年前の1997年と比べて、順位の入れ替わりが見られるのみで希望の職業は変わっていません。
それに対して、女の子を持つ親の就かせたい職業は、1位看護師、2位公務員、3位薬剤師。過去最高の割合となった看護師とともに、10年前より伸びを見せた薬剤師は、超高齢化社会においても需要が見込まれる医療分野で、資格を求められる職業であることから、食いっぱぐれにくいという安心感が人気なのでしょう。そんな「安心・安定」を求める傾向の中にあって、5位のケーキ屋・パン屋はなんだか異質な存在に見えてきます。子どもの人気が根強いのはわかりますが、親にも人気があるのは一体なぜでしょうか?