子育て世帯では、仕事をもつ女性より仕事をもたない女性のほうが幸福度は高い。つまり「有職主婦」よりも「専業主婦」のほうが幸せと感じている。その理由について、翻訳家の佐光紀子氏は「専業主婦を前提とした『手づくり礼賛』とそれにまつわる『丁寧な暮らし』が働く女性を苦しめている」と分析する――。(第1回、全3回)

※本稿は、佐光紀子『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社新書)の第1部「完璧家事亡国論」を再編集したものです。

女性の34.2%が「専業主婦になりたい」

2016年3月の『ニューズウィーク』にこんな記事があった。

「日本は世界一『夫が家事をしない』国」。

国際社会調査プログラム(ISSP)の2012年の調査で、調査に参加した33カ国中、18歳未満の子どもがいる男性の家事・家族ケア分担率の割合で、日本が最下位をマークしたという記事だ。ちなみに、日本の分担率は18.3%、ブービーメーカーのチリに劣ること6.2%で、ダントツのビリだった。

佐光紀子『「家事のしすぎ」が日本を滅ぼす』(光文社新書)

ひとつの理由は長時間労働の影響とされることが多い。だがもう一つ、日本の男性の家事参加率の低さを考える上で見過ごせないのが、女性側の家事に対する意識だ。

平成25年に三菱総合研究所が実施した「少子高齢社会等調査検討事業(若者の意識調査編)」から、男女の意識の差をのぞいてみたい。

調査では、男女それぞれに「結婚相手の女性に専業主婦になってほしいか」「結婚後は専業主婦になりたいか」と問いかけている。

これに対して、男性で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」人は19.3%と2割を切る。そして半数の50.5%は、どちらともいえないと答えている。どちらともいえない……読み替えるなら、「まぁ、どちらでもいい」「結婚相手の意志に任せる」……ということだろうか。

これに対して女性はというと、34.2%が専業主婦になりたいと答えている。一方で、どちらでもいい人は27.2%、専業主婦になりたいと思わないという人は全体の38.5%と専業主婦になりたい人を5%弱上回る。

専業主婦願望は世帯年収と大きくリンク

女性の場合、専業主婦願望は世帯年収と大きくリンクしている。世帯年収が400万未満で専業主婦になりたい人はおよそ30%だが、400万~600万では43.9%、600万~800万では37.5%、800万~1000万だと48.1%が専業主婦を志向するようになる。

ところが、これが、世帯年収1000万を超えると、33.3%と平均を下回り、1500万を超える世帯ではそう思う人はゼロ、「どちらかといえばそう思う」人は12.5%と、夫婦で稼いで豊かな生活を享受している様子が感じられる結果となる。

なぜ、専業主婦になりたいと思うか(複数回答)については、41.5%の女性が「女性には家事や子育てなど、仕事をするよりもやるべきことがあると思うから」と答えている。「夫がしっかり働けるようにサポートするのが妻の役目だから」(19.8%)という人も2割ほどいる。