勝ち組企業のビジネスモデルとは何か? を考える時、こうした生産設備を抱えてしまうというやり方、プロダクトアウトの発想は、大きく時代からずれてしまっている、言い換えれば負け組のビジネスモデルといってもいいかもしれません。

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21世紀は、作ったものをひたすら売るという発想ではなく、「お客さんが今、何を欲しているのか」という発想で考えることが重要です。そして、お客さんが求めるものを作ってくれる人は、世界中にいくらでもいます。アップルでさえ設計やデザインはしても、製造はホンハイにほぼ一任しています。しかしアップルのスマホを使っている人は、それをアップルの製造委託先ホンハイの子会社フォックスコン(中国・成都)が作っていることなどほとんど知らないでしょう。

これからの勝ち組企業の必須条件は製造設備や人材を社内に抱え込まないのと同時に、「お客さんのことが分かっていて、お客さんの意見を聞いて、それを実現するためのソリューションが作り出せる」ということです。ソリューションが何かを最初に考えて、それを実現してくれる人、会社を世界中から探し出してくる「ソリューションファースト」の発想を持っていないと勝ち組企業にはなれないのです。

会社を変えたければ正規社員を抱えてはいけない

今は社内に人を抱えなくてもクラウドソーシングで外にいる人間に仕事を依頼できます。政府は「正規社員を増やします」などと言っていますが、そんな話をまともに聞いていては駄目です。正規社員を抱えるというのは、会社が変われなくなる最大の原因なのですから。

製造システムも人材も、クラウドコンピューティングやクラウドソーシングを使っていくらでも外から引っ張ってくればいい。そうした発想でゼロから会社を組み立てるとすれば、「うちの会社にとって、実はこんなものは要らないのだ」というものが機能別、事業別に山のように出てくるはずです。

「今会社にいる人間に何をやらせるか」という考え方ではもう絶対に駄目です。「今、自分の会社がやるべき目的というものを明確にして、それに対して何をやるのか?」。こういう発想で考えないと勝ち組企業にはなれません。

大前研一(おおまえ・けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長
1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。
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