※本稿は、『大前研一 日本の論点2018~19』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
早稲田大学のオケでクラリネット
【大前】今、ダニエル・ハーディング(英オックスフォード出身の指揮者。パリ管弦楽団の音楽監督)を聴いてきたんですよ。
【樫本】パリ管弦楽団(愛称はパリ管)の東京公演ですか。
【大前】そう。パリ管は学生時代に聴いて、ものすごく興奮したことがある。東京文化会館の空気に色が付いたような感じがしましたね。
【樫本】そうですか(笑)。
【大前】私、当時、早稲田大学のオーケストラでクラリネットをやっていたので、あそこはよく使ってましたが、あんなに興奮したのは初めて。その後、2、3回行きましたけど、あんな感激はしてない(笑)。
【樫本】僕も2013年、サントリーホールでパリ管を聴きました。素晴らしかったです。サン=サーンスの『オルガン付き(サン=サーンス 交響曲第3番ハ短調作品78)』で。
東京藝大を受けようと勉強していた
【大前】私、以前にベルリン・フィルのオクテット(八重奏)を聴きに行ったことがあるんだけど、あの時は樫本さんじゃなかったですね。またオッテンザマーというクラリネット奏者が親子3人で共演していたのも聴きに行ったことがある。
確か、一人はおたくのオケの首席奏者ですよね(オッテンザマーはオーストリアの名門音楽一家。父親エルンストと長兄ダニエルはウィーン・フィルのクラリネット首席奏者。次男アンドレアスはベルリン・フィルの首席奏者)。
【樫本】そうです。やはりクラリネット、お詳しいですね。
【大前】本当にすごい演奏だった。私も長い間クラリネットをやってますけど、商売に選ばなくて本当によかったと思いました。
ジャック・ランスロ(フランスのクラリネット奏者)の名前を冠したクラリネットの登竜門(ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール)が2年に1回あって、ランスロの故郷であるフランスのルーアンと日本の横須賀で交互に開かれる。
14年に横須賀でやったときに招待されて聴きに行ったんですけど、150人くらい参加者がいて、まあ、みんな上手い。死ぬほど上手い。
【樫本】(笑)
【大前】私、東京藝大を受けようと思って勉強していたんです、高校時代。でも友達に「商売にしたら趣味じゃなくなるぞ」と言われて、趣味をキープするためにやめた。実際、商売にしなくてよかったとつくづく思いました。
樫本さんみたいに若い頃からとんとん拍子のように見える人がいれば私なんかとっくにやめてたんですけど、当時、クラの若手であまりすごい奏者はいなかった。今は若い人も、めちゃめちゃ上手い。
【樫本】アンドレアス・オッテンザマーも21歳か22歳くらいでベルリン・フィルの首席奏者になってますからね。本当にすごいですよ。
デジタルコンサートはすごい企画
【大前】ベルリン・フィル、自宅のホームシアターで毎日のように見ているんですよ。
『デジタル・コンサートホール(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏をリアルタイム配信する会員制の有料映像サービス)』ね、臨場感が素晴らしい。
【樫本】ありがとうございます。
【大前】カメラアングルが最高。NHKのコンサート映像はちんたらしているんだよ。ソロが終わった頃にカメラ振ったり。ベルリンのカメラワークはいいですよ。
【樫本】遠隔操作のビデオカメラが7台。カメラ自体もすごくいいものを使っているみたいです。音響にもこだわっているので、音のクオリティも高いと思います。
【大前】コンマス(コンサートマスター)のところにはなかなかカメラは行かないのね。
【樫本】そうかもしれないです。全然来ないです。基本、デジタル・コンサートホールでは女性を映します(笑)。だから実際にコンサートホールに来られる方は、「あれ? もっと女性がいっぱいいると思ったのに」と思うんですよ。実際、女性の正団員は結構少なくて、15~16人しかいませんから。
【大前】そうなんだ。ハープの人は顔が映らない。反対側から撮るから手ばっかり。ハープの女性って、大体、美人のイメージがあるじゃない? 髪が長くて。だから「カメラ、こっち行け、こっち行け」っていつも思うんだよね。なかなかやってくれない(笑)。
【樫本】そうそうそう。美人さんですよ、でも。
【大前】それにしても自宅のリビングでベルリン・フィルのライブが思う存分聴ける。
デジタル・コンサートホールはすごい企画ですよ。観に行きたくてもベルリン・フィルのチケットなんかほとんど買えないからね。
【樫本】ありがとうございます。