マネジメントをされたこともしたこともない課長

経営者が頭を抱える1つの課題。それは「会社の経営を自分と同じ視点で考えられる経営幹部がいないこと」と多くの経営者は言う。それはつまり、後継者が育っていないことである。

昨今、ライバル企業からフランス人クリストフ・ウェバー氏を社長に招聘した武田薬品工業、孫正義社長がグーグル最高幹部であったインド人ニケシュ・アローラ氏を後継者に指名したソフトバンクグループなど、プロ経営者をヘッドハントする例も目立つ。現経営者が高い能力と強いリーダーシップを持った人物であればあるほど、後継者不足の問題が深刻化するのはよくある話だ。

プロ経営者はドラスティックに変革を進めるパワーがあるが、手放しにいいとは言えない。コストは高く、いつ次の会社に行ってしまうかわからない。会社の理念や大切にしているカルチャーを、理解できずに壊してしまうかもしれない。何より、社内に不満、反発が渦を巻くだろう。自社内から後継者が出てくることが望ましいはずだ。

しかし超高速であらゆる事象が変化する時代。グローバルM&A戦争のなかで勝ち残るために、企業は息をつく暇もない挑戦と変革を迫られている。

そのトップは、素早い決断力と行動力、経営の知識、高いマネジメントスキル、そしてさまざまな事業を成し遂げた経験、すべてを備えていなければとても務まらないのが現実だ。

だが残念ながらそのような人材は、日本の企業のなかで自然には育ってこない。日本のミドルマネジメントは、人員やプロセスを管理する「管理職」であり、組織を変革し、新しいビジネスを創造し、未来の舵を取るリーダーとは違うからだ。リーダー人材不足は今、危機的な状況にあるという。