起用が相次ぐプロ経営者が株価を上げるわけ
今年6月、サントリーホールディングス社長にローソン会長の新浪剛史氏が抜擢される人事が注目を浴びた。これまで創業一族が歴代トップに就いてきたが、外部からトップを招くのは初めて。株式市場でもローソン立て直しで実績のある新浪氏への期待が反映され、上場子会社のサントリー食品インターナショナルの株価を押し上げる効果を生んだ。
こうした“強い経営者”を外部から起用するケースが今、増えている。米GE副社長からLIXIL社長に就任した藤森義明氏、日本マクドナルド会長からベネッセコーポレーション社長にスカウトされた原田泳幸氏、それにJALを再生させた京セラ名誉会長の稲盛和夫氏、野村証券出身で産業再生機構社長から東京証券取引所社長を経て東証・大証を再編した日本取引所グループCEOに就いた斉藤惇氏などだ。
私は仕事柄、海外の投資家に会う機会が多いのだが、いつも彼らに言っているのは、平均的な日本企業などもう存在しないということである。よい会社と悪い会社があるのみ。よい会社には、強い経営者がおり、そうした会社の株価パフォーマンスは明らかにいい。強い経営者は今、変化を求め、グローバル競争に勝とうとする日本企業にとって、必須の条件になりつつあるのだ。
その背景にあるのが、株式保有構造の変化だ。現在の日本株の保有構造を見ると、外国人の保有比率が今年3月、初めて30%を上回った。この保有比率は年々増加している。しかも東証の売買額の3分の2は外国人である。一方、比率を落としているのが、企業間、メーンバンクの相互持ち合いだ。ひと口に言えば、今の日本企業の株価は、外国人が決めていると言える。外国人が買ってくれなければ株価は上がらない。外国人に買ってもらうためには、強い経営者、外国人にウケる経営者でなければならないのだ。
さらに、こうした流れを加速させているもう一つの理由が、最近話題になっている社外取締役制度である。現在、コーポレート・ガバナンスを強化するために社外取締役を中心とした委員会を設置する会社が増えている。その中枢機能が次の後継者を社外取締役が指名する仕組みであり、強い経営者を外部から起用する素地は日本でも整いつつある。
今、日本企業の置かれた状況は、日本企業同士の競争だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの企業とグローバルに競争し、資本を奪い合う様相を呈している。世界の会社と張り合って勝つには、強い経営者がどうしても必要なのである。