世界のMBAランキングで常に上位に君臨するビジネススクールINSEAD。今回、同校で教えるリーダーシップ論の世界的権威に話を聞いた。組織のリーダーに最も重要なもの――それはずばり、「判断力」だという。

日本も欧米も中国もリーダーが直面する課題はみな同じ

――日本企業のリーダーを欧米や中国、韓国企業などの海外リーダーと比較すると、どんな違いが見られますか。
INSEAD教授 ナラヤン・パント
フランス、シンガポール、アブダビにキャンパスを持つビジネススクールINSEADのアドバンスト・マネジメント・プログラム統括者。日本企業についても30年以上研究を続け、現在も頻繁に来日し企業のリーダーを対象に研修を実施している。

【パント】私がインシアードで担当しているシニアリーダー向けのプログラムは受講者の平均年齢が48歳で、受講者の国籍は日本をはじめ欧米諸国や中国、韓国、ブラジル、南アフリカなど多岐にわたります。しかし、あと一歩か二歩でCEOに届く各国からの参加者たちが直面している課題と日本企業のリーダーが直面している課題には、何の違いもありません。現在は国籍にかかわらず、リーダーはみんな同じような課題に立ち向かっているのです。

たとえば、今後どうやって事業環境を予測していくのか。どのようにして正しい判断を下すのか。どうすれば自分自身に自信を持って仕事に向き合えるのか。どうすれば正直さ、誠実さを持って自らを提示することができるのか――。企業のリーダーはどの国でもこのような課題に直面しています。

組織のリーダー層に達する前は、何か問題があっても財務、生産、マーケティングなどそれぞれの担当分野のなかで技術的な答えがあれば解決することができます。しかしリーダーというレベルになると、技術的な解決案があったとしてもそれだけで問題解決はできません。国籍にかかわらず、リーダーがみんな同じような課題に直面するのはこのためです。