2035年までに14万人が自動車工業で失職の恐れ

ドイツ最大の労働組合である金属産業労組IGメタルが10月28日に明らかにしたところによると、同国を代表する世界的な完成車メーカーであるフォルクスワーゲン社(VW)は、今後、国内の工場を少なくとも3つ閉鎖すると、IGメタル側に説明したようだ。その結果、少なくとも数万人規模の雇用が整理される見通しだという。

2024年10月22日、ドイツ経営者団体連合会(BDA)の2024年ドイツ経営者会議で演説するオラフ・ショルツ連邦首相(SPD)
写真=dpa/時事通信フォト
2024年10月22日、ドイツ経営者団体連合会(BDA)の2024年ドイツ経営者会議で演説するオラフ・ショルツ連邦首相(SPD)

VWの不振は主に2つの理由による。まず、電気自動車(EV)の需要の落ち込みだ。欧州連合(EU)は2035年までに新車の100%をEVに代表されるゼロエミッション車(ZEV)にする方針を掲げているが、EVの需要は盛り上がっていない。VWもEVの生産を強化しているが、EVの販売が不振であるため、業績の重荷となっている。

とはいえ、これはVWに限った話ではない。VWの不振は、それまでのキャッシュカウであった中国市場で競争力が低下したことによっても促されており、これが第二の理由となる。EVを中心に民族系メーカーが競争力を高めたことで、VWの中国市場での立ち位置が揺らいでいるわけだ。一方で、VWは新たな利益の源泉を生み出せていない。

こうしたことから、VWはドイツ国内の工場の閉鎖を余儀なくされている。VWは関連企業を多く抱えることから、そのリストラはドイツの製造業のみならず、ドイツ社会に多大な影響を与える可能性がある。IGメタルは10月29日より賃上げストを開始しているが、リストラに反発するVWの従業員もまた、このストに合流したようだ。

リストラは何もVWに限った話ばかりではない。ドイツ自動車工業会(VDA)が10月29日に発表した見通しによると、そもそものドイツの自動車工業の不振やEVシフトに伴う生産体制の見直しなどで、EUが新車の100%をZEVにすると定めた2035年までに、ドイツの自動車工業で14万人もの雇用が整理される可能性があるという。