抱えないアイドルエコノミーの先駆者「ラクスル」

ネットを活用した印刷サービスを提供しているラクスルもアイドルエコノミーの先駆的な会社であり、“抱えない勝ち組企業”のいい例です。彼らも自社内に製造施設、つまり印刷工場を抱えていません。

そもそも印刷会社は、必要な印刷量の倍を印刷できるような印刷機械を確保しています。なぜかというと、印刷機械は壊れやすいものなので、故障時にも必要な印刷量を担保するためです。ラクスルはこの通常は使っていない印刷性能を活用することで、低コストを実現しています。

印刷サービスを提供する会社が印刷機を持たないというのは、考えてみればすごいことですが、ラクスルは空いている、つまり稼働していない全国の印刷工場の印刷機を有効活用しているのです。

これまでは、企業がDMやチラシ、カタログなどの印刷を発注する時、数社から見積もりをとって彼らの言い値で頼むという方法をとってきました。対してラクスルは、全国にある数万社の印刷会社と連携し、発注者の要望にマッチする印刷会社に印刷を依頼する、という仕組みです。

こうしたビジネスモデルによって、お客さん側は安く早く印刷物を納品してもらうことができ、印刷会社も印刷機械の稼働率が上がってWin-Winというわけです。最近ラクスルと同じような印刷サービスを提供する会社もいくつか出てきていますが、みな共通しているパターンとしては、自分たちで印刷機を抱えていないという点です。

「ソリューションファースト」という発想

今、日本企業、とくに多くのメーカーが陥っている根本的な問題は、自分たちで抱えてしまった製造設備と人間をできるだけ稼働させなければならない、作ってしまったものはどうにかして売らなければならない、ということです。これは、お客さん、市場のニーズよりも企業側の意向を優先したプロダクトアウトの発想です。

自分たちで生産施設を抱えてしまうと操業度重視になり、お客さんのニーズがよく見えない状態になってしまいます。お客さん側は「こういう商品がほしい」と言っているのに、メーカー側はひたすら「私たちが作ったものを買ってください」と言い続け、売りたい人と買いたい人がマッチしなくなり、商品も売れない。これは当然といえば当然です。