仕事を外注したい企業と、仕事を受注したい個人とをマッチングさせるサービス、クラウドソーシング。「クラウドワークス」は国内のクラウドソーシングサービスとしては日本最大級で、現在の会員数は100万人を突破している。

同社は2014年に上場を果たしたが、1回目の起業は従業員や取締役に逃げられて失敗するなど、道のりは決して楽なものではなかった。ベンチャー企業の経営者にとって、いかに信用を得て資金を調達するかは会社の存続に関わる超重要テーマである。過去には事業の失敗によって投資家から否定的な評価を受けたこともあるという吉田浩一郎社長に、「企業のお金の集め方、使い方」について聞く。

事業資金「出資」「融資」の使い分け

――クラウドワークスを始める以前、最初の起業のときの開業資金はどれぐらいだったのでしょうか。

【吉田】正確な数字は覚えていないですが、100万円ぐらいで会社を作って、政策金融公庫から、新創業融資という無担保無保証のお金を300万円ぐらい借りて、それでスタートしたと思います。

クラウドワークス 吉田浩一郎氏
――開業資金としては少ない方ですね。

【吉田】そうですね、1回目の起業は自分のお金と借りたお金しか使ってないです。一方で、2回目の起業であるクラウドワークスは出資のお金でドライブさせていて、今度は借金をしていません。その経験からいうと、事業資金には3種類あると考えています。自分のお金、借りたお金、出資いただいたお金。この3つは、明確に性質が違います。

自分のお金は、銀行に置いておくと減らないですよね。むしろ金利分、多少増える。ところが借りたお金というのは、金利分目減りする、置いておくと減るお金なんです。一方、出資を受けたお金は、増えるか減るかでいくと、減りはしない。

自分のお金と借りたお金だけなら、株式でいうと持ち株比率は100%です。ところが出資を受けると、自分の持ち株比率が減る。専門用語でいうと希薄化といいますが、ここが大きな違いです。

この3つのお金の質の違いというのを考えて、それぞれに向いた使い方があるので、自分自身がステージごとにどこを目指したいのかによって、どのお金を使うかが違ってくると思っています。

用途という意味でいくと、自分のお金は何に使ってもいいわけです。でも、借りたお金は、事業投資する用途を明確にした上で借りるので、基本的には借りる際に申し込んだ事業に使います。Aという事業をやるといってるのに借りたお金で全然別のこと、例えば車を買うとか、馬を買うっていうのも昔は極端な例としてあったらしいですけど、今はそういうのは許されない。一方、出資のお金は、使途は明確にするものの、株の買い戻しは双方合意がなければできないので、一回出資が決まったら、(融資のお金と違って)「やっぱりお金返して」みたいなことはできない。つまり、事業を転換することを受け入れてくれる余地がある。だから自分で何をやっていいかわからないというときには、個人の意志だけで出資できるような個人投資家(※エンジェルと呼ばれています)から出資をお願いしてメンタリングを受けながら事業を創っていくことも選択肢の一つです。

――なるほど。

【吉田】お金の使い道のビジネスモデルが検証できていて、投資対効果がある程度見えているなら、出資より融資の方がいい時もあります。先が見えないようなイノベーションに関しては、リスクマネーとして設計されている出資のお金のほうがいい。融資っていうのは基本的には顕在化されている市場でビジネスをするときに向いていて、出資のお金は、潜在市場向きですね。