NHK「ばけばけ」では、ヘブン(トミー・バストウ)の記者時代の同僚女性やトキ(髙石あかり)の元夫が登場するシーンが描かれている。史実では、どうだったのか。ルポライターの昼間たかしさんが、文献などから迫る――。
1889年のラフカディオ・ハーンの写真
1889年のラフカディオ・ハーンの写真(写真=Gutekunst/Concerning Lafcadio Hearn, 1908/PD US/Wikimedia Commons

朝ドラと異なる“セツのライバル”の史実

NHK朝の連続テレビ小説「ばけばけ」の年内最終週は、毎朝「続きが気になってしようがない」展開だ。

トキ(髙石あかり)の前に現れた元夫の銀二郎(寛一郎)は、事業で成功した姿を見せつけ、松野家の男たちを復縁への期待でそわそわさせる。そして、ヘブン(トミー・バストウ)のもとに現れたのは、新聞社時代の同僚イライザ・ベルズランド(シャーロット・ケイト・フォックス)だ。

このイライザが、またヘブンへの好意を隠さない。「同僚」という紹介に「せめて大切な人とか、大切な友達とかいってよ」とニコニコ。さらに錦織(吉沢亮)には「初めて会った気がしないわ」と微笑む。

筆者の乏しい人生経験でも、こういう「いきなり距離を詰めてくる異性」は危険信号だ。でも登場人物たちは誰も警戒しない。トキだけが、突然の元夫の登場に戸惑いつつ、ヘブンの横に並ぶイライザに言いようのないモヤモヤを抱えている。

このまま、年を越してしまうのか。

しかし、イライザのモデルであるエリザベス・ビスランドは、ドラマとはまったく違っていた。

八雲の長男「肉体を離れた精神的な恋で、文章上での恋」

ビスランドと小泉セツは、八雲が片思いしていた女性と妻という微妙に気まずそうな関係にありながら、八雲の死後も親交を深めた。それどころか、二人は協力して八雲の遺産を守り、その名を世界に広めていったのである。

しかも、八雲はビスランドを熱愛していたこともよく理解していた。八雲の長男・一雄は、そのことをこう記している。

エリザベス・ビスランド女史との親交はあるいは一種の恋愛と言い得るかも知れぬ。しかし、それは白熱の恋ではない。沢辺の蛍の光のごとき清冽な恋である。つまり肉体を離れた精神的な恋で文章上での恋であった。(小泉一雄『父小泉八雲』小山書店1950年)

「恋愛」と明言しながら「清冽」「精神的」「文章上」と形容する。これをどう解釈すればいいのだろう。

ハーンは親友エリザベス・ビスランド女史のことを“The Lady of a Myriad Souls”と評しているが、これとて女史を誹謗した訳では決してなく、多少の皮肉を交えた面白い批評で、女史本人もまた夫君ミスター・ウェットモールもこれをおもしろがっておられた事実を私は知っている。ケンナード女史のごとくこれをあえて浮気女的な意味に受けとるのはことごとく解釈する人それ自身の品性の低さを示すものである。(同上)