自分のお金で3年会社を回した経験が信用になった

――個人投資家からお金を出資してもらうところが最初の壁だと思いますが、どういうところが成功要因だったのでしょうか。

【吉田】最初は私の信用は無かったに等しいと思うんです。むしろ、お前は過去色んな事業に手を出していて怪しいと言われたぐらいで。ただ、一回目の会社は失敗して事業も立ち上がらなかったし、従業員も役員も出ていったんですけど、会社としてはちゃんと利益を出していた。3年やって、自分がゼロからつくった会社でちゃんとお金を儲けたというのは武器になりましたね。さっさと出資を受けた方がいいという起業家もいますけれど、自分のお金でちゃんとお金儲けをしたことで、ビジネスを最低限推進できる人だという信頼は得られたと思います。

――なるほど。

【吉田】実は、自分のお金と借りたお金でやったというのは、このスタートアップの界隈だと、ちょっと格好悪いっていうか、有名な投資家とかベンチャーキャピタルから出資を受けたほうが格好いいみたいなイメージってありますけど、必ずしもそうじゃないと思うんですよ。自分のお金で3年経営してきた経験っていうのは、出資を受けるにあたって武器にはなりましたと。だから遠回りしてよかったと今は思っていますね。

よく「吉田さんは人脈が広そうだからそういう個人投資家からの出資をしてもらえたんですよね」と言われるんですが実はエンジェルラウンドの個人投資家は、元々はそんなに面識の無い方々でほぼゼロからお願いして廻りました。須田仁之さんは比較的友人でしたけど、他のメンバーの山木学さん、山田進太郎さんなどは、元々1年に1回みんなでお会いするぐらいで。

――そういう関係性だったんですね。

【吉田】はい。だから元々仲良かったから出資していただけた、というわけではないんですよ。小澤隆生さんに至っては、そもそも面識がありませんでした。彼がやっている小さいセミナーみたいなのが当時あって、そこに飛び込みで入っていって、話を聞いて欲しいとお願いをしたんですよ。よく小澤さんからどうやって投資を受けたんですかって聞かれますけれど、基本的には面識が無いところからの正面突破でした。ただ、須田さんが共通の知人だったので、彼に会食を設定してもらったり、後押ししてもらったっていうのがあるかもしれないですかね。その中で小澤さんに「お前は怪しい」って言われても、悪い話を包み隠さず話して自分をさらけ出すということで、小澤さんに最低限検討してもらえたのかなと思います。