自分自身をさらけ出した方が、投資家の信頼を得られる

――悪い話もした方が信用してもらえるものなのでしょうか。

【吉田】会社をやっていて思うんですけど、起業家ってみんな同じような道を通っているんですよね。だから若手の起業家を見ると、嘘をついているかどうか、あるいは、格好をつけているかとか、隠し事があるかとか、割とわかっちゃうんです。先輩起業家からは驚くぐらい見抜かれているものですよ。だから、あまり格好つけない方がいい。夢を語るときは格好つけていいんですけど、自分自身についてはやっぱりある程度さらけ出した方が信頼を得られるなっていうのが私の感覚ですね。

『起業家のように考える。』(田原総一朗著・プレジデント社刊)
――背伸びしてもバレちゃうんですね。

【吉田】はい。個人投資家も2種類いると思っていて、圧倒的にすごくて引っ張り上げてもらえる人と、わりと横にいてくれて、同じ目線で一緒に上がっていこうみたいな人。山木学さんは、当時、非上場の頃のイトクロの社長だったんですけど、今は上場してご活躍されていますよね。会社のステージとかタイミングがうちと似たところがあったんです。だから投資していただくことで一緒に上がっていこうという感じでした。一方で、小澤さんっていうのは、もう圧倒的に先にいて引き上げてくれるというような感じですね。

――そうすると、個人投資家から出資してもらうというのは、お金だけじゃなくて、その方のノウハウだったり、人脈だったりとかもわりと活用させてもらえることもあると。

【吉田】そうですね。シードラウンドで、クラウドソーシングっていうビジネスモデルを教えてくれたのがサイバーエージェントベンチャーズ社長の田島聡一さん(当時)でした。また、シリーズAラウンドでは、投資していただける候補先の伊藤忠系のベンチャーキャピタルにアポイントを取ろうとしても断わられたんですけど、既に投資して頂いていたサイバーエージェントベンチャーズが後押ししてくれたらお会いできたんですね。最初に入れてくれたベンチャーキャピタルが、次のベンチャーキャピタルを連れてきてくれるという効果があったと思いますね。

――あと、どこまで外のお金を入れていいのかという点もひとつの悩みどころではないですか? 自分がイニシアティブをちゃんと取っていくために、どのくらい自分で確保しておいたほうがいいのでしょうか。

【吉田】抽象的な話になりますが、お金に対する価値観や欲求の度合いで決めていいかなと思います。自分の株式のシェアというのは、イコール、オーナーシップです。オーナーシップを全部取りたいっていうんだったら、100%断わるべきですし。私は29歳でIT業界に入って、37歳でクラウドワークスを創業したのですが、業界的には遅咲きの方だと考えていたので、自分のオーナーシップよりは、みんなの力を借りて大きくチャレンジすることのほうが重要だという価値観だったわけです。だからみんなに株も持ってもらうというようにしたわけです。