※本稿は、木部智之『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。
「即・行動」が、良い結果を招くとは限らない
どんなに難しい仕事も、基本的な仕事の応用形や変化形でしかありません。
ですから何かトラブルが起こったときには、絡み合った事象をシンプルにして、問題の本質を見抜くことが重要です。
問題の本質が見えてきたら、おのずとその解決策も決まってくるからです。
ですが、トラブルの真っただ中にいて慌てふためいている人は、問題を解きほぐそうとせず、複雑に絡み合った状態のままで問題を抱え込んでしまいがちです。
そして、次のような「即・行動」に至るのです。
・思いつきや衝動で、行動を起こす
・目の前のトラブルだけを見て、動き出す
・取りあえず、やってみる
こうした行動は、トラブルが起きていないとき、あるいはあまり難易度の高くない単純な仕事であれば成果に結びつくこともあります。
例えば、目標が「電話で1件アポイントを取る」というだけなら、手当たり次第に電話をかけて、運が良ければOKをもらえることもあるでしょう。「とにかく、やってみるしかない!」的な試みであっても、クリアできるでしょう。
しかし、目標が「電話で100件アポイントを取る」という場合はどうでしょう。
難易度がグッと高くなり、とにかく手当たり次第に行動するだけでは、到底クリアできません。
「すぐにやる」と「速くやる」は違う
私自身、若手にこのような話をすると、「えっ、即・行動の何が悪いんですか? 木部さん、いつも『速く、速く』と繰り返しているのに……」と言われることがあります。
こうした疑問をぶつけてくれた若手には、「『すぐにやる』と『速くやる』は違うんだよ」という話をしています。
当然ですが、仕事を先延ばしにしたりぐずぐず遅らせたりすることは、絶対によくありません。「速くやる」ことは大事です。
しかし、作戦も何も考えずにいきなり手を動かして「すぐにやる」と、目的地(問題解決)にたどり着くのに時間がムダにかかってしまい、結果として、「速くやる」ことができなくなってしまいます。
そもそも人間は、目の前のことに興味を引かれる生き物です。それが動物の本能だからです。
例えば、公園のベンチの下にポップコーンが1個落ちているのを見たハトが、それに手をつける前に「他のベンチの下にも、ポップコーンがたくさん落ちているかもしれない!」とキョロキョロ探しまわることはありません。まず、必ず目の前のポップコーンに直行します。