思わぬ「要精密検査」に目の前が真っ暗……。そんなとき、うろたえるまえに、落ち着いてください。「病気である確率」は意外に低いのです。健康診断のデータの「正しい読み方」をお教えします――。

検査と診断では使う数値が違う!

会社の健康診断で悪い数値が出たり、予期せず「陽性」の反応が出たとき、どのくらい深刻に受け止めればいいのか。

(PIXTA=写真)

「端的に言えば、基準値から外れたからといって必ず病気だとは限りません。一方で、基準値内だからまったく気にする必要がないと考えるのも誤りです」というのは、亀田ファミリークリニック館山の岡田唯男院長だ。

なぜか。まず項目によっては、検査で要注意と判定される数値と、医師が診断に使う数値がそもそも違っていることだ。

「たとえば糖尿病検査では、空腹時血糖値が100mg/dl以上だと医師の受診を推奨されますが、医師が糖尿病と診断するのは126mg/dl以上の人です」

血液検査などの基準値は、統計学的に「健常な人の95%がおさまる範囲」で決められている。一方、医師が病気を診断するときは、検査データに加え、喫煙習慣や血圧や肥満度、親族の病歴といった他の危険因子も、重要な判断の手がかりになる。

「血糖値が110であっても、他の危険因子がゼロなら『どうぞ今まで通りの生活を楽しんでください』と言うこともありえます。逆に同じ血糖値でも、タバコを1日40本吸い、太っていて血圧も高めというような方は、糖尿病という病名はまだつかなくとも、生活改善を促すお話をさせていただくわけです」

悪玉コレステロール(LDL)についても同様に、他の危険因子がどれだけあるかで、数値の許容範囲や治療開始の判断が変わってくるという。

また、陽性/陰性の判定が出る検査では、病気でないのに陽性反応が出る偽陽性、逆に病気なのに陰性と判定してしまう偽陰性の問題もある。がんのように罹患率が比較的低い病気の場合は、その後の二次検査・三次検査でがんが見つかる「真の陽性」の人より、偽陽性の人のほうが圧倒的に多い。