受けるべき検査、必要性が薄い検査

たとえば、大腸がんの有効な一次検査法として知られる便潜血検査では、受診者の約7%が「要精密検査」と判定される。だが二次検査の後、実際に大腸がんと診断されるのは一次検査を受けた人の0.1~0.2%程度。偽陰性による見逃しを少なくしようと検査の感度を上げると、偽陽性が増えてしまうというジレンマもある。

基準値とは、健常な人のデータから統計学的に求められた1つの目安。少しでも外れたら100%病気というわけではないし、基準値内だからといって病気でないとは言い切れない。

岡田院長は各種検査を、飲酒運転の検問のようなものと説明する。「怪しい人、つまり見つけたい病気の確率がより高そうな人と、心配しなくてもよさそうな人を大まかに振り分けるのが健康診断であって、病気かどうかを判定する『診断』行為ではないということです」

そこを踏まえたうえで、どういうスタンスで集団検診や人間ドックに臨めばいいのか。「自分が受ける検査の意義や特性を、あらかじめきちんと理解しておくのが望ましいですね」。

検診や人間ドックは、保険診療ではなく「自己負担」の世界。そのため、標準的医療の観点からは必要性が薄い検査もしばしば含まれる。

たとえば、血圧測定や便潜血検査、肥満の人の糖尿病検査などは、死亡率の低下や病気の早期発見による利益が科学的に証明されている(年齢による)が、腫瘍マーカー検査のように、スクリーニング検査としての有効性について専門家の間で議論がある検査も少なくない。

「たばこを吸わない人が肺がん検診を受ける必要はあまりないでしょう。脳ドック検診も、大半は手術しなくていい小さな動脈瘤か、隠れ脳梗塞の痕が見つかる程度。やるべきことは動脈硬化の対策で、他の標準的な検査で出る注意と変わりません」