「部下から信頼される上司」の条件とは
朝日新聞がアスパラクラブ会員2万人に「中間管理職という言葉で思い浮かべる著名人」をあげてもらったところ、男性著名人のベスト5は島耕作、佐藤浩市、谷啓、原辰徳、および西田敏行、女性著名人のベスト5は黒木瞳、久本雅美、篠原涼子、真矢みき、および天海祐希だった(朝日新聞2007年5月4日朝刊)。島耕作は漫画界のスーパーサラリーマン。責任感があり、トラブルへの対応も的確で部下の信頼も篤い。佐藤浩市は男っぽくて力強く頼りがいがありそう。谷啓、西田敏行は庶民的で親しみやすい感じ。巨人監督・原辰徳は、その明るく、爽やかな風貌でファンが多い。
女性著名人の黒木瞳、真矢みき、天海祐希は、宝塚歌劇団の出身で、有能で意志の強い、頼りになる女性という役どころが多い。久本雅美は率直で、面白く、親しみやすい。篠原涼子はドラマ「ハケンの品格」で、有能で責任感が強く、男性の正社員からすっかり頼りにされるハケンを演じて好評だった。
このように見ると、人々が期待する上司像とは、責任感が強く有能で頼りがいがある上司、率直でユーモアがあり、親しみを感じられる上司、などといったところであろうか。それでは現実の上司(中間管理職)は部下からどのように見られているのであろうか──以下の調査を行った。
「現在会社組織で働いている」男女約100名(平均年齢=31.5歳)に「あなたの直属の上司(85%は男性、平均年齢=42.5歳)の行動チェック・リスト」を渡し、リストにある行動項目が直属の上司にどの程度よく当てはまるかを5点尺度(1=全然当てはまらない、5=非常によくあてはまる)で回答してもらった。
このチェック・リストは、上司の好ましい行動(たとえば「困ったときには力になってくれる」など)と好ましくない行動(たとえば「下には威張り上にはペコペコする」など)で構成されていた。さらに、アンケートの別の場所で、直属の上司に対する回答者自身の信頼感(「今の上司を信頼している」など5項目)、および会社へのコミットメント(「これからもこの会社でずっと働きたい」など5項目)についても回答してもらった。調査結果に特定の会社や職場、世代の影響が出ないように、広くいろいろな人に回答してもらった(*1)。
このアンケートの一部は、アメリカの心理学者K・バトラー(Butler)の「信頼形成の条件」調査表Conditions of Trust Inventory に基づいている。バトラーは過去の研究や面接に基づき、部下から信頼される上司の10の条件を確認している(*2)。
図表1の右半分はバトラーの10の条件に基づく今回のアンケート調査の結果で、上司の好ましい行動を部下の評価に基づいて3つのカテゴリーに分類し、それぞれが部下の信頼感にどの程度強く影響していたかを示したものである。