部下の目にあなたはどんな上司として映っているだろうか
【部下から嫌われる上司とは】
図表1の左半分は、上司の欠陥行動を回答者の評価に基づいて3つのカテゴリーに分類し、それらが部下からの信頼感をどのように損なうかを示したものである。
●事なかれ主義で頼りない
上司のすぐれたリーダーシップが部下からの信頼感に強くプラスに影響していたことを示す右半分の裏返しで、リーダーとしての能力、意欲の欠如は、部下の信頼感を著しく損なう要因になっていた。こうした上司とは、具体的には、事なかれ主義でチャレンジ精神がない上司、やる気がない上司、部下が納得できるような判断や指示ができない上司であったが、これらの上司は、先の「パス・ゴール理論」がいう、リーダーの役割、すなわち、部下に方法・手段を明示して、部下の目標達成を助けることができない上司であり、部下が嫌うのは当然であろう。
●部下の尊厳を傷つける
「おまえは月給泥棒だ!」「目障りだから消え失せろ!」などの上司の暴言によって「うつ」になり、首つり自殺した35歳の男性会社員の死に対して東京地裁は労災と認める判断を下した(朝日新聞07年10月16日)。このように職権を背景にして、部下に対して精神的・身体的苦痛を与え、個人の尊厳を傷つける行為を俗にパワーハラスメントと言っている。先の例の暴言ほど極端ではないにしても、権力を笠に着たものの言い方をしたり、地位を利用して自分の意見を押し付けたり、部下と意見が合わないと声を荒らげるなども、部下の信頼を損なうことになる。
たとえ自分が直接上司からそのようなパワーハラスメント的仕打ちを受けなくても、そのような上司の行為を見聞すれば、職場環境は劣悪なものと感知され、上司に対する信頼感を失うであろう。そもそも、「権力を笠に着て、人を人とも思わない態度」をとる人物は、誰からも信頼されるはずはないが、その人物が「上司」である場合には、部下の迷惑・被害は甚大である。
●保身と出世しか考えていない
下には威張り、上に対しては声まで変わり、臆面もなくペコペコする。わが身の出世しか関心がない。自分の非を絶対に認めようとしない。失敗は部下のせいに成功は自分の手柄にする。自分より有能な者を陥れようとする。自惚れが極端に強く、薄情……。
このように、自分のことしか頭になく、徹底的に自分中心的で、部下の軽蔑を買う上司が、たいていの組織には少数ながらいるものである。会社全体や部下たちの利益や福利には関心がなく、自分の私利私欲で動き、保身に熱心な上司を、部下はめざとく見抜くものである。ところがこうした上司の中には世渡りが巧く、意外にも上層部のおぼえめでたく、出世コースを歩んで、部下たちをがっかりさせ、すっかり会社不信にさせるものもいる。