「いい介護ができるかどうかのキーは、娘が親の世話をする担当になること」。介護現場で働く人々はそう語ります。なぜ、「妻」や「嫁」ではなく「娘」なのか。また、娘を中心とした親の介護では、どんなことに注意すべきなのか。介護経験をもつライターの相沢光一氏が解説します――。

妻や嫁ではなく「自分の介護は娘にしてほしい」

ケアマネージャーは担当する利用者が決まると、要介護者本人と家族のもとを訪問し面談をします。その際、介護の担い手となる人物を見て、内心「この人なら良い介護ができそう」とか「大変な介護になるんじゃないか」と思うことがあるそうです。

男性と女性で比べると、やはり女性のほうが望ましい、というのが本音のようです。夫婦のどちらかが要介護になる老老介護にしても、子が親のケアをする場合にしても、介護者が女性ならば家事や人の世話をすることに慣れていることが多く、細やかな気遣いもできる。

男性はオロオロして何もできなくなる

一方、男性の場合は総じて家事全般にうというえ、人の身のまわりの世話をした経験が乏しいのが現実です。よって、ゼロから学ばなければならず、想定外の出来事があるとオロオロして何もできなくなってしまうこともあるそうです。

これはあくまで、私が話を聞いたケアマネージャーたちの経験則であって、もちろん性別によって向き・不向きを安易に決めつけることはできません。しかし介護の現場において、「男性はあまり頼りにならない」とみられていることは、知っていただきたい事実です。

「私たちが担当することになった家族で、よりよい介護ができそうだとひとまず安心するのは、性格的にしっかりした実の娘さんが介護の担い手になるケースですね」
そう語るのは女性ケアマネージャーのYさんです。

「娘を持つ親御さんの多くが、自分の介護は娘にしてほしいと思っておられます。娘さんのほうも親に対する愛情がありますし、育ててくれた恩返しという思いもあって積極的に介護に臨もうとします。また、お互い気心が通じ合っていますから、適切な対応ができうる存在が娘さんです」

とはいえ、娘さんが介護に専念できる状況にあるとは限りません。

嫁いでいたり、仕事を持っていたりする場合は、親の側に“迷惑をかけられない”という思いがあり、結局息子の奥さん(嫁)に介護を担わせることになることが多いそうです。そして前回 、記したような姑の介護を折り合いの悪い嫁がすることによるトラブルが起こるわけです。