慢性的な人手不足の介護業界。仕事内容は過酷で、報酬はほかの業界より低い。それでも現場で前向きに働くスタッフがいる。彼らは「嫌がる仕事をあえてやっている」のだろうか。3人のケアマネージャーは、共通して「必ずしもそうではない。世間からのイメージが悪すぎる」という。介護職の魅力について、現場の声を聞いた――。
薄給だけど「介護の仕事は魅力的」と語る理由
介護現場の実情を聞くために、ケアマネージャーをはじめ多くの介護関係の仕事に就く人たちに会ってきました。
彼らが担当する利用者には、さまざまな人がいます。常識的で「いい人」ばかりとは限りません。よって、当欄で触れたように彼らは要介護者と家族とのトラブルに巻き込まれることもある。提供したサービスが不満でクレームが入ることもある。業界用語で「困難事例」(介護する側に物理的な危害を与える場合などを含む)といわれる対応が難しい利用者と遭遇し、大変な思いをすることもあるそうです。
しかし、これまで会った人たちに、今従事している介護の仕事を悪く言うケースはありませんでした。むしろ、その逆です。「やりがいを感じています」「この仕事に就いて良かったと思っています」と語るのです。
読者の中には意外に感じる方もいるでしょう。
介護職の平均月給21万5200円 全産業平均より9万低い
メディアでは介護業界が慢性的な人手不足であることが、よく取り上げられます。その要因としてあげられるのは、まず賃金水準の低さ。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2016年)」によれば、全産業の平均月給は30万4000円(ボーナスなどを除く)であるのに対し、介護職は施設で働く職員は21万5200円、ホームヘルパーは21万3000円、ケアマネージャーは25万5800円と、いずれも下回っています。
仕事は過酷です。介護職では排泄の介助は避けて通れませんし、身体介助がともなう職種は腰などを痛めがちです。介護職には「3K(きつい、汚い、危険)」のレッテルが張られており、人気職種とはいえません。従って、人手不足もなかなか解消できないというわけです。
そうした報道に接する機会が多いせいか、世間では「介護職従事者は人の嫌がる仕事をあえてやってくれている人たち」というイメージがあるような気がします。