リタイア後、あなたはどんな場所に住めば幸せだろうか。街を歩き、店に立ち寄り、少々の自然も感じられる──。辛気臭い建前を捨て、本音の「いい街」を紹介しよう。

リタイア世代もデートを楽しめる街

そもそも、リタイア後の生活の質を決めるのは病院や介護施設に近いという安心感だけだろうか。テレビや雑誌などの企画では介護施設が多いとか、長寿の人が多い(表参照)といったランキングをもとに「老後安心できる街」を探ることが少なくない。しかし、介護施設などのハードウエアには恵まれていても、車に依存しなくては何もできない街や、都市の潤いに欠ける街では、住んで「幸せ」といえるだろうか。

そこで今回、参考にしたのが、HOME'S総研による「センシュアス・シティ・ランキング」調査だ。この調査は従来のランキングとは異なり、施設の充実度やその街に対するなんとなくのイメージではなく、実際の「体験」に注目。その街で起きるセンシュアス(官能的)な体験の頻度を調査して偏差値化した。たとえば「刺激的で面白い人たちが集まるイベント、パーティに参加した」「コンサート、クラブ、演劇、美術館などのイベントで興奮・感動した」といった体験が多いなら、「機会がある」の指標が高偏差値になる。このほか「匿名性がある」「食文化が豊か」など合計8つの指標の偏差値を合計して「センシュアス度」を測り、順位づけしたのが今回の調査結果だ。

ここで上位につけた街は、いわば毎日イキイキと暮らせる街、多くの人が住みやすいと感じる街である。ランキングの発案者であるHOME'S総研所長の島原万丈氏はこう語る。

「今回の調査は熟年世代に限らず、20~64歳の幅広い世代が対象です。しかし、たとえば『共同体に帰属している』『歩ける』という指標は間違いなく熟年世代に響くものですし、そのほかの指標も世代とは関係なく、高いほうが望ましいと考えられます。また、異論もあるでしょうが、『ロマンスがある』は若い人だけの特権ではないと思います。デートするのは若者だけじゃない。高齢の方も夫婦でデートしたほうが生活に潤いがあって素敵です。日々の生活で刺激を受けながら『若返る』ことも、中高年以上の熟年夫婦にとって大切な要素でしょう」