介護業界における「困難事例」の高齢者とは?
介護業界には「困難事例」という用語があります。
これは自宅で介護を受ける高齢者など、利用者側になんらかの問題があり、介護サービスを提供する側が対応に苦慮したり、トラブルが生じたりする、といった事例をさす言葉です。
その困難を主に受け止め、どう対処すべきか頭を悩ませるのは、ケアマネージャー。利用者側(本人や家族)と相談してケアプランを作り、介護サービスの連絡調整・実施管理を行う司令塔役です。
困難事例は、介護サービスを提供する側が以前から抱えている問題であり、「当事者」でなければ直接関係はありません。ただ、広く介護現場の世界ではどんな困難やトラブルが起きているのか知っておいてもいいでしょう。
いったいどんな行為や言動が「困難事例」に該当するのか。
自分の老親が介護サービルの利用を始めた時、そのことを知っておけば、ケアマネージャーから「あのお宅は困難事例の利用者だ」と見られずにすみます。そこで、困難事例の実情を知るべく、現場で活躍中の男性ケアマネMさんとIさんに話を聞きました。
▼「介護利用者の1割は困難事例です」
Mさんは言います。
「ケアマネは例外なく困難事例を体験していますが、実際に担当することが多いのは男性ケアマネですね。精神的にキツいケースや身に危険が及ぶケースもあって、女性ケアマネがそういう利用者さんに当たってしまった場合、急遽、男性ケアマネが代わって担当することが多いからです。どこからが困難事例か、という線引きは難しいので統計などはないと思いますが、私の経験では担当する利用者さんの1割ほどが困難事例です」
ひとりのケアマネージャーが担当するのは30件ほどですから、平均すると3件くらいの困難事例を抱えていることになります。「ここからが困難事例の利用者」という線引きは難しいということですが……。
「困難事例には、要介護者ご本人に問題がある場合と、介護をする家族に問題がある場合があります。その両方に共通するケースで一番多いのは、サービス提供者に対するクレームですね」(Mさん)