日産のタイムリミットはあと1年ちょっと
経営再建計画「Re:Nissan」の真っただ中にある日産自動車(以下、日産)。その目標は“2026年度までに業績を回復し、長期的な成長に向けて経営を再建する”ことだ。
直近の2025年度上期決算では販売台数148万台、連結売上高は5兆5787億円で、営業損失は277億円だった。また通期見通しは、売上高が前期より6000億円減の11兆7000億円、2750億円の赤字と発表している。他の自動車メーカーと同様、今期はトランプ関税の影響が大きい。
Re:Nissanでは自動車事業の黒字化を掲げている。達成時期を「2026年度=2026年度末」と解釈すると、タイムリミットまで残り1年4カ月を切った。
果たして日産は成長軌道に乗ることができるのだろうか。2025年4月に就任したイヴァン・エスピノーサ社長の新体制下での各種取材を振り返りつつ、日産復調の可能性を探る。
「日産はいま、セカンドギアにシフトアップした」
ジャパンモビリティショー2025(一般公開:10月31日〜11月9日、会場:東京ビッグサイト)で実施されたメディア関係者とのラウンドミーティングで、エスピノーサ社長は意気込みを語った。これはRe:Nissanの3本柱の一つである「コスト構造の改革」にめどが立ったことを意味する。
16年間止まった時間を動かすエルグランド
具体的には、神奈川県追浜工場や日産車体・藤沢工場での製造終了、新車開発スピードの向上、下請法遵守の徹底とサプライヤーとの関係見直し、またグローバル本社での事務系社員向け早期退職制度の活用など、事業のスリム化を進めている。
その上で、Re:Nissanの残る2本の柱である「市場戦略と商品戦略の再定義」と「パートナーシップの強化」を本格化させる段階にある。つまり、新しいプロダクトの拡充だ。ジャパンモビリティショー2025は新生日産のプロダクトを披露する場となった。エスピノーサ社長が筆者を含むメディア関係者を引き連れ、ブース内を巡る一幕もあった。
商品戦略再定義の象徴が大型ミニバン「エルグランド」だ。1.5リッターのガソリンエンジンを発電機として使う第3世代e-POWERと、四輪制御機能e-4ORCEを搭載し、日産らしい走りを追求している。
日産はエルグランドによって大型ミニバン市場を切り開いたという自負があるが、16年間もフルモデルチェンジを怠った結果、多くの顧客がトヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」へ流れた。新型エルグランドでシェア奪回を目指す。


