国内再成長を担う新型車が出揃う
このほかの新導入モデルとしては、これまで海外向けだったSUV「パトロール」の日本仕様、EVの先駆者としての新型「リーフ」、日本市場の約4割を占める軽自動車では新型「ルークス」など、国内販売に直結するモデルが並ぶ。
さらに、V型6気筒ツインターボエンジンを搭載する「スカイライン400R」と「フェアレディZ」を目立つ位置に展示。エスピノーサ社長は「日産のヘリテージであり、顧客のロイヤルティを重視するために不可欠」と語り、国内外のモータースポーツ活動を含め、スポーティモデルの重要性を強調した。
今年の4月の世界フォーミュラE選手権・東京大会で、筆者が日産のピットエリアでエスピノーサ社長に声をかけたときは、追浜工場稼働停止に関する報道が出たばかりだった。EV市場の拡大が期待される一方、コストのかかるモータースポーツ予算に対する賛否が世間で議論されていた。
これについて尋ねると、エスピノーサ社長は「(経営の)ファイナンシャルなことは左脳で考え、今日のようなエキサイティングな場では右脳を使う」と笑顔で回答。ポートフォリオに基づく経営判断だけでなく、現場主義とパッションを重んじる姿勢が印象的だった。
交渉決裂したホンダとの距離感
次に「パートナーシップの強化」について触れよう。
日産は複数の自動車メーカーとのパートナーシップを抱えており、それらのバランスを慎重に検討している。
1つ目はルノー・日産・三菱アライアンスだ。ルノーは株式保有関係を見直したが、欧州向け小型車「マイクラ」などで協業を継続。三菱自動車工業とは軽自動車事業の合弁会社NMKVを維持し、モデル相互補完も継続している。例として北米向けSUV「ローグ・プラグインハイブリッド」は、三菱「アウトランダー」をベースにしている。
2つ目は中国での東風汽車との関係強化だ。急激な電動化と厳しい価格競争が進む中国市場において、コスパの高い電動車「N7」が好調で、苦戦していた中国事業に光が見え始めた。
3つ目は本田技研工業(ホンダ)との関係である。2024年に合併が模索されるも交渉は決裂したが、日産技術幹部によれば「合併がなくなった後も電動化・知能化分野で技術交流が続き、双方にとって気づきが多い」という。このようにRe:Nissanの3本柱はそれぞれ成果を生みつつある。流れは内田誠前社長体制を引き継ぐが、エスピノーサ新体制では経営判断が加速している印象だ。


