食料品は買ってくれるが、酒・タバコは買ってくれない
介護保険が適用されるホームヘルパー(訪問介護員)のサービスには「身体介護」と「生活援助」の2種類があります。
いつも介護現場で起きていることを報告してくれるケアマネージャーの男性Iさん(首都圏で10数年の経験)、女性Yさん(同)。ケアマネは要介護者やその家族の状況に応じて、ホームヘルパーを派遣する司令塔的な仕事をしています。生活援助に関するさまざまな事例にも詳しいこの2人は、生活援助に関して世の中であまり知られていない事実があると言います。
生活援助とは、原則独居の要介護者の中で、体が不自由だったり認知症の症状があったりして日常の家事ができない人を、ヘルパーがサポートするサービスです。
▼「ここまではできる」「ここから先はできない」という線引き
援助の内容は、掃除・ゴミ出し、洗濯、調理、ベッドメーク、衣類の整理、買い物などがありますが、「ここまではできる」、「ここから先はできない」という厳格な線引きがされているのです。たとえば買い物です。
「ヘルパーのサービスにはこんな決まりがあるんです。“日常生活を営むために最低限必要な品物の購入で、かつ日常生活の行われる地域内の近隣の店舗等で購入する場合に限られる”という。つまり、日常生活に必要と思われないものや嗜好品、趣味に関係するものは買ってはいけません。食料品やトイレットペーパーなどの生活必需品は問題ないんですが、酒やタバコは嗜好品だから買うことはできません」(Iさん)
「酒が生きがいなんだ、飲めなきゃ死んだほうがましだ」「寝酒を飲まないと眠れないから」などと訴える人もいるそうですが、ダメなものはダメと断るそうです。
また、手芸が得意な女性から「体は動けなくなっちゃったけど、手は動くから孫にマフラーを編んであげたいの。毛糸を買ってきて」と頼まれても買いに行くことはできないそうです。
「人情としては買ってきてあげたいところですが、残念ながらこれもダメなんです。毛糸は日常生活に必要とはいえませんし、趣味の範疇に入るからです」(Iさん)