「ヘルパーさんにおばあちゃんの食事を作ってもらうのと一緒に、今晩の家族の分も作ってもらおう」。これはいまの介護保険ではNGだ。介護保険サービスと組み合わせて「家族用の食事」をつくることは認められていない。だが日本総研の福田隆士氏は「サービスを柔軟に組み合わせる『混合介護』が可能になれば、業界の人材不足解消にも役立つ」という。なにが介護の効率化を妨げているのか――。

すでに「上乗せ」と「横出し」はあるが……

 混合介護の弾力化に向けた検討が本格化している。2016年9月の公正取引委員会「介護分野に関する調査報告書」における提言をはじめ、179年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」において、厚労省がその検討を進めることとされており、東京都と豊島区では18年度以降のモデル事業実施に向けた検討が進んでいる。混合介護は、介護保険サービスとそれ以外の一般のサービス(保険外サービス)を組み合わせて提供することを指す。

現状でも保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供することは可能であるが、時間を区切る、あるいは場所を区切るなど、明確に区分したうえで提供する必要がある。明確な区分が必要とされる理由は利用者保護の面が大きい。保険サービスと保険外サービスを一緒に提供することで、必要ではないサービスが一体的に組み込まれる可能性、間接費用が介護保険を給付する側に転嫁される可能性があり、これを防ぐ狙いがある。

介護保険サービスの一つである訪問介護を例に、提供可能な混合介護の範囲を示したい。介護保険で利用できる限度額は、介護を要する度合いによってそれぞれ定められており、訪問介護を利用できる回数にも上限がある。この利用上限を超えて利用したい場合は自己負担でサービスを受けることができる。訪問介護には「身体介護」と「生活援助」の2種類があり、身体介護は食事や入浴、排泄などを介助するもので、生活援助は掃除や洗濯、調理などをサポートするものである。ただし、生活援助において庭の掃除やおせち料理の準備などは対象とはならず、保険外サービスとして利用する必要がある。

このようにサービスを保険の利用上限を超えて利用することを「上乗せサービス」、そもそも保険の対象になっていないサービスを提供することを「横出しサービス」と言い(図表1)、現状でもその提供は可能である。明確な区分が必要とされるため、両サービスを一緒に提供することは原則不可とされている。