2025年には37.7万人の介護人材が不足する
今年の6月に政府から2017年度版の成長戦略である「未来投資戦略2017」が発表された。この中で政策資源を集中していく戦略分野としての筆頭に挙げられたのが「健康寿命の延伸」である。関連する介護については、今後の目指すべき方向として「科学的介護の導入による『自立支援の促進』」が掲げられた。
この具体的な中身として、大きく2つのキーワードがある。一つ目は「自立支援」であり、もう一つのキーワードが「ロボット・センサー」といった「技術革新の活用」である。つまり、ロボットやセンサーの活用を介護報酬制度の中でしっかり評価して普及促進していくべき、との提言である。
背景には、介護業界における深刻な人手不足がある。介護サービスの有効求人倍率は、すでに全国平均で3倍を越えており(厚生労働省「職業安定業務統計」)、厚労省の推計によれば、団塊世代が後期高齢者となる2025年には37.7万人の介護人材が不足するといわれている。介護現場の負担を軽減し、人材不足を解消する役割がロボット・センサー等に期待されているのである。では技術革新の活用は、具体的にどのような方向を目指すべきか。
根本から介助業務の削減・ケアの見直しを目指す
ロボットやセンサーの活用という場合、これまでは「人手で行っている介助を、単純にロボットで置き換える」という発想が強すぎた。技術革新を契機として、単純な「置き換え」ではなく、介助業務そのものを減らすといった新たなケアのあり方を模索すべきである。
特に、センサーやIoT(Internet of Things=モノのインターネット)技術による業務改善や利用者のQOL(quality of life=生活の質)向上が期待できる分野として、「排泄介助」や「おむつ交換」があげられる。例えば、最近注目を集めているのが、トリプルダブリューが開発したDFreeという、超音波センサーで排泄(現時点では排尿)の予兆を検知するウェアラブルデバイスである。これを介護現場でうまく活用し、適切なタイミングでトイレに誘導できれば、「おむつ交換」という業務自体を減らすことができる。「一律に時間を決めて行っているトイレ誘導」という過剰なサービスも見直せる可能性がある。
これ以外にも、ニオイによって排尿・排便を検知するセンサーも製品化されつつある。排尿・排便の検知による適切なタイミングでのおむつ交換ができれば、介護者側の業務量を減らせると同時に、介護を受ける側が不快感をおぼえる時間を短くできる、という効果が期待される。