加えて、「ケアプランのAI(人工知能)化」も、業務効率化というより、「質の向上」での期待が大きい。医療依存度の高い要介護齢者が増加する一方、不足している看護師等医療系の資格を持つケアマネジャーの役割を補うことが、AIやシステムに期待される。既にセントケアや産業革新機構等が出資するシーディーアイやベンチャーのウェルモなどによる、AIを活用したケアプラン作成の取り組み等が始まりつつある。
在宅生活のQOL向上に技術革新を活用する
どちらかというと、これまでロボット・センサーを活用する場所は、介護施設が中心になってきた。しかし、現在、「住み慣れた自宅で自分らしく暮らし続ける」という地域包括ケアが大きな流れになっており、自宅で安心して暮らし続けるために、技術革新を活用していくことも重要である。
LPWA(低出力広域デジタル無線規格通信)を使った徘徊高齢者の探索・見守りサービス(LiveRidgeの「LiveAir」)や、離れて暮らす家族の家電の使用状況から、日々の暮らしぶりを把握したり、ゆるやかな見守りを行うサービス(東京電力エナジーパートナー)など、IoT技術等を用いた在宅向けの新たなサービス・ソリューションも徐々に増えてきている。
施設と違い、在宅では、「誰がソリューションの費用を負担するのか」という問題がある。利用者が費用負担をするものではサービスは広がらない。上記のような見守りサービスは、利用者や家族にとって価値があるだけではなく、業務効率化やケアの質の向上の面で、医師、ケアマネ、訪問介護・看護、薬剤師などにもメリットがある。介護の生産性を上げるためにも、主に政策面での普及促進に向けた支援が期待される。
施設・在宅いずれにしても、介護の現場には解決すべき課題が数多く存在する。報酬の削減、人手不足など、その環境は厳しさを増す一方である。現在、実用可能な技術を見極めながら、これらの課題を解決するイノベーションが今後ますます重要になっていくだろう。
日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門マネジャー。1975年生まれ。1999年京都大学経済学部卒業後、日本総合研究所入社。介護・シニアビジネスをはじめとしたB2C分野でのマーケティング、新商品・新サービス開発などの各種コンサルティングに従事。在職中、神戸大学にてMBA取得