介護ヘルパーは「家政婦」ではない。介護保険で実施できるサービスには明確な線引きがある。たとえば要介護者が犬や猫を飼っていて、世話ができなくなったとしても、ヘルパーが世話を代行することはできない。では、寝たきりになってしまった場合、エサやりや糞尿の世話はどうすればいいのか――。
ヘルパーは窓ふきをしない、犬猫の世話もしない
前回は、親に介護が必要になったとき、ホームヘルパーに依頼できる生活援助サービス(介護保険適用)の範囲を取り上げました。(「なぜ介護ヘルパーは汚い窓を拭かないのか」http://president.jp/articles/-/24112)
この「生活援助」とは要介護者が日常生活を営むうえで最低限必要なサポートであり、「ここまではできるが、ここから先はできない」という明確な線引きがあります。
たとえば、掃除は利用者が過ごす部屋の中はできるが、別の部屋はNG。また、掃除機をかけるのはいいが、窓ふきはNG(日常の掃除ではなく大掃除の範疇だから)です。
実は、「ペットの世話」も生活援助でヘルパーに依頼できないNG項目です。20年以上のヘルパー経験を持つ女性ケアマネジャーのYさんは言います。
▼「散歩連れてって」「エサ買ってきて」すべてNG
「私がヘルパーを務めていたとき、早朝に愛犬との散歩を日課としていた独居の女性の担当になりました。要介護1でしたが、歩くことはできたので、それが健康法であり大きな楽しみでもあったのです。ところが、転んで骨折し歩けなくなってしまった。その方にとってワンちゃんは生きる支えといえる存在でしたから、“ほんの少しでいいから散歩に連れていってもらえないか”と依頼されました」
「でも、ペットの世話は日常生活で必要とされる『生活援助』の項目から除外されており、『規則でできないのです』とお断りするしかありませんでした。『ならば、せめて食事を与えたいから、ペットフードを買ってきてほしい』と言われましたが、それもやってはいけないルールです。生活援助で食材や日用品を買うことはできるのですが、そのために行くスーパーにペットフードがあっても、買ってくることはできないのです」