高齢者の入居施設である「サ高住」が急増しています。この5年間で2倍以上に増えていますが、問題のある施設も少なくないようです。特に運営会社が介護事業者を兼ねている場合、利用者に不要なサービスを押し付けることもあるといいます。その悪質な手口とは――。

この5年で2倍以上に増えた「サ高住」の問題点

前回(※)は高齢者の恋愛問題を取り上げましたが、その舞台となったのが「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」でした。
狂おしく燃え上がる老人ホーム恋愛の末路

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Nayomiee)

サ高住は、2011年の「高齢者住まい法」の改正で新しくつくられたもので、高齢者向けの機能が確保された民間の賃貸住宅です。利用者は、入居時に敷金・礼金のほか、毎月、家賃・管理費・食費・水道光熱費などを支払います。

年老いて体が衰えてくると生活するのにもさまざまな苦労や不安が生じます。食事を作る、掃除をするといった家事は大変になりますし、体に異変が生じて倒れてしまうこともあり得ます。息子や娘がケアできればいいですが、別居している場合は頻繁に様子を見に来ることも難しい。

そうした事情を抱えた高齢者や家族のニーズに応える形で登場したのがサ高住です。居室をはじめ建物内はバリアフリー化され、日中はスタッフが常駐し、「安否確認」と「生活相談」のサービスが受けられます。また、別料金になりますが、希望すれば朝昼晩の食事や居室の掃除、洗濯、買い物といった生活支援のサービスもあります。住み慣れた自宅を離れる寂しさはあるにせよ、サ高住に入居すれば本人も家族も安心、というわけです。

なお、介護保険による介護サービスは“基本的に”自宅で受けていたサービスと同じ扱いですが、例外もあるので、そのことは後述します。

▼要介護度が重くなると退所しなければならないケースも

在宅介護では、担当のケアマネジャーが作成したケアプランに従ってサービスを受けます。サ高住に入居すれば、その居室が自宅代わりとなり、そこへホームヘルパーがやってきたり、デイサービスへ通ったりするわけです。介護保険により原則1割負担となる料金も、各自が受けたサービスに応じて支払います。

「施設」ではなく「住宅」ですから、生活の自由度が高いのも特徴です。老人ホームなどの施設では限られた職員が多くの入所者をケアする必要上、1日のスケジュールが決められています。しかし、あくまで住宅であるサ高住は、1日をどう過ごそうと自由。だから、高齢者同士の「恋愛問題」も生じるのです。

現在、サ高住はどんどん増えています。5年前は全国で約11万戸でしたが、2018年3月現在では約23万戸。この5年で2倍以上になっているのです。

増えている理由のひとつは、比較的安価で入居しやすいから。高齢者施設で最も入所希望者が多いのは「特別養護老人ホーム」ですが、原則として要介護3以上でないと申し込めませんし、地域によっては入所まで長期間待たされます。それに代わる選択肢になるのが民間の「有料老人ホーム」ですが、こちらは家賃が高いというハードルがあります。

その点、サ高住は数も多く、比較的安価なので、人気があるのです。ただし短所もあります。自立して生活できることが前提のため、要介護度が重くなると退所しなければいけないのです。