親や自分が世話になる可能性大「サ高住」の意外な現実
前回は「サービス付き高齢者住宅」(サ高住)の現状について書きました。どのようなニーズに対応してくれるのか、簡単におさらいしましょう。
自分の高齢の親が要介護になったり日常生活の不安が生じたりした時、自宅を出て施設に入ることが選択肢に入ってきます。その際、「特別養護老人ホーム」は原則要介護3以上でないと申し込めません。地域によっては空きが出るまで長期間待たされることがあります。また、「有料老人ホーム」は入所費用が高額というハードルがあります。
その点、サ高住は家賃が比較的安価なうえ、数が増えているので選択の余地があり、入居しやすい住まいです。民間の賃貸住宅(入居時に敷金礼金を払う)で、居室(25平方メートル以上で、ワンルームマンションのようなイメージ)をはじめ、建物内はバリアフリーで、安全にも配慮されています。日中は常駐のスタッフが「安否確認」を行い、「生活相談」にも対応してくれます。
別料金になりますが、希望すれば朝昼晩の食事をはじめ、居室の掃除、洗濯、買い物といった生活支援サービスを受けられます。高齢者向けとはいえ、あくまで「住宅」であり、老人ホームのような職員によるケアこそありませんが、サ高住に入居すれば安心して生活できるというわけです。
▼「空室」回避のため入居者獲得の熾烈な競争
「施設」ではなく「住宅」であることから、これまでは「自立して生活できる(要介護度が低い)人が入るところ」というイメージがありましたが、最近ではこの点も変化が見られます。
首都圏でケアマネジャーを務めるIさんは、「高齢者の急増を見越してサ高住に投資する人が増えており、今は供給が需要を上まわっている状況なのです。マンションやアパートの経営と同様で、空室があったら成り立ちませんよね。そのため入居者獲得の競争が起こっているんです」といいます。
競争によって経営者サイドに、これまでのサ高住にはなかった付加価値を盛り込む発想が生まれ、それが変化につながっているというのです。
「日本で最もサ高住が多く競争が激しい大阪などは、看取りまで対応するところが増えていると聞いています。サ高住は要介護度が重くなると出なければならない、といわれていましたが、そうとは限らなくなってきたということです。全国的に見れば、そうしたサ高住はまだ少ないですが、看取りをはじめさまざまな特徴やサービスを付加するところは増えていくのではないでしょうか」