「攻撃的態度で大声出す」「不必要に個人的な接触はかる」
介護職員の74%が、サービス利用者やその家族からハラスメントを受けた経験がある――。今夏、介護職員でつくる労働組合「日本介護クラフトユニオン」の調査(調査対象は全国の介護職員2411人/女87.4%、男12.2%、無回答0.5%)で、介護現場の過酷な現実が明らかになりました。
ハラスメントを受けた人のうち、9割以上が遭っていたのが「パワハラ」です。上位6項目は以下の通りでした。
「攻撃的態度で大声を出す」61%
「『○○さんはやってくれた』等他者を引き合いに出し強要する」52.4%
「サービス契約上受けていないサービスを要求する」34.3%
「制度上認められていないサービス強要する」31.9%
「強くこづいたり、身体的暴力をふるう」21.7%
「『バカ』『クズ』など、人格を否定するようなことを言う」21.6%
このほか少数ですが、「土下座の強要」を受けた人も2.6%いました。
また、ハラスメントを受けた人のうち、4割が「セクハラ」の被害にも遭っていました。上位3項目は以下の通りです。
「サービス提供上、不必要に個人的な接触をはかる」53.5%
「性的冗談を繰り返したり、しつこく言う」52.6%
「サービス提供中に胸や腰などをじっと見る」26.7%
このほか、「性的な関係を要求された」という人も14%いました。
上司に相談しても8割はスルーされてしまう理由
ハラスメントの被害者の約8割は、上司などに相談したそうですが、約半数のケースは、これといった対応策はとられず、状況は変わらなかったとそうです。介護職員の多くがサービスを提供しながら、ハラスメントによる不快な思いをしたり、身の危険を感じたりしているのです。
この事態を介護現場の人たちは、どう受け止めているのでしょうか。埼玉県内でケアマネジャーとして11年のキャリアを持つSさん(37)が答えてくれました。
「私も訪問介護のヘルパーさんなどから、こうした相談をよく受けます。上司に被害を訴えても対応してくれない、と。『認知症の症状だから仕方がないと言われた』『その程度は我慢しなさい』などといわれるそうです。でも、ヘルパーさんにとっては相手が認知症であろうと嫌なものは嫌。私たちケアマネは、現場のスタッフから、『利用者さんやその家族にハラスメントを止めてもらえるように伝えてほしい』としばしば相談を持ちかけられるのですが、それを実行するのには躊躇があるのです」