ハラスメント被害を防止するための「妙案」
そのために有効な方策はないのでしょうか。
「私は介護現場でのハラスメントに対するガイドラインをつくるべきだと思います。被害に遭った職員の訴えなど過去の事例を検証して、ここまでだったら許容範囲だが、これ以上の行為は許さないという線引きをする。また、利用者さんは、サービスを受けるにあたって事業所と契約を交わしますが、契約書にその“線引き”の内容を盛り込み、ガイドラインに抵触したらサービスの提供を停止できる、とするのです。このガイドラインがあれば、ある程度はハラスメントの抑止力になるのではないでしょうか」
Sさんは利用者やその家族にも、介護ではハラスメントが起こりがちであることを認識しておいてほしいと言います。
「現状はハラスメントに対するペナルティはほとんどありませんが、そういうことが発生するとサービスの質が低下する可能性は高くなります。被害を受けた職員は対応するのが嫌になり、退職してしまうこともある。担当者や事業所を替えて対応するわけですが、それでもトラブルが繰り返されると地域の介護業界に“要注意利用者”としてそれとなく知られることになり、さらにサービスの質が落ちるという悪循環に陥ることがあるのです」
自分の父親や母親が介護職員にハラスメントをするなんて考えられないことかもしれませんが、多くの職員が被害を訴えている現実があります。“ひょっとしたら……”という意識を家族も持っておくべきなのです。
(写真=iStock.com)