サ高住の勧誘パンフ「豪華」「大手」は問題があった

競争がサービス向上への努力につながっているというわけです。入居を考えている側からすれば歓迎すべき流れといえそうですが、「サ高住全体の質が上がっているわけではありません」とIさんはいいます。

写真はイメージです(写真=iStock.com/Nayomiee)

「私が担当するエリア(首都圏の某市)のサ高住はすべて視察しましたし、利用者さんの評判も聞いていますが、7対3の比率で問題のあるところのほうが多いですね。建物や居室はどこも新しく住み心地のほうは良いと思いますが、月額の利用料の割にはサービスが行き届かない。運営する会社は不動産という発想で建てていますから、どうしても利益追求が優先になる。福祉事業をしているという感覚に欠けるのです」

一般人は高齢者施設の種類はもとより、どのような事業者がどういったシステムで運営しているか理解していない人が少なくありません。また、家族が在宅での介護に疲れ切り、緊急避難的に要介護者を受け入れてくれるところを探すといったケースも多い。なかには、そんな事情につけこんで、ひと儲けしようというブラック業者もいるというのです。

そうした利益優先のサ高住では多くの問題点が指摘されています。スタッフが少なく、夜間は不在になるところもある、スタッフには介護の知識がない者も多く、何かアクシデントがあっても適切な対応ができない、結果、安全が担保されない、といいます。

▼「この5件の中では一番悪いんですよ」

そう言ってIさんはストックしてあったサ高住のパンフレットの束を差し出し、「このなかで、どこが評判のいいところだと思いますか」と聞いてきました。

介護サービス利用者と日々接しているケアマネのもとには、サ高住の営業マンが紹介してくれるよう頼みにくるそうです。

見比べたのは5社のパンフレット。いずれもカラー印刷で制作コストをかけた立派な仕上がりです。建物の外観や居室の写真はもちろん、デイサービスを併設しているところは、その利便性、入居者同士の交流イベントを行っているところは、その楽しそうな様子、提供する食事が自慢のところはおいしそうな料理、といった具合にそれぞれのセールスポイントを示す写真が掲載されています。このパンフレットを見ても、入居者獲得競争が激しいことがうかがえました。

パンフレットを見る限り、どこも良さそうに見えます。判断がつきかねましたが、この中に誰もが聞いたことがある大手企業グループが運営しているCというサ高住があり、そのブランドイメージから「ここなら安心だろう」と選んだところ、意外なことに「この5件の中ではCの評判が一番悪いんですよ」との答え。そこは“生活支援サービス費”として毎月3万円以上を徴収しているのに、やってくれるのはサ高住の義務である安否確認と生活相談くらいのもの。掃除や洗濯などを頼むと別料金が発生するといった具合で、とにかく儲け主義なのだそうです。