サ高住の運営者が「利潤追求」のためにしていること
ただし、例外もあるようです。首都圏近郊でケアマネジャーを務めるIさんはこう言います。
「最近のサ高住は多様化しており、必ずしも要介護度が重くなったら出なければならない、というわけでもありません。その背景にはこれまでの介護施設とは違う運営者が参入していることも影響していると思います。資産形成の手段としてマンションやアパートと同じようにサ高住に投資する人も多いのです。そのため『空室』を出さないために、介護度が重くなっても入居を続けられるサ高住もあるようです」
Iさんは「サ高住はどんどん多様化している」と強調します。どういう意味なのでしょうか。
「サ高住には条件があり、居室は25平方メートル以上でバリアフリー構造である必要があります。ワンルームのマンションの一室をイメージしていただければいいでしょう。何か異変が生じた時のための緊急通報装置もついています。普通の賃貸住宅とは異なるのは、キッチンと浴室がついているとは限らないことです。浴室やキッチンが共用の場合、居室は18平方メートル以上と少し狭くてもいいことになっています」
特に風呂は危険が大きいので、居室には浴室をつけず、共用にしているところが多いそうです。
「大浴場があればいいのですが、予算面から、ユニットバスを交代で使うようなところも多いようです。そうした浴室をスタッフが管理していて、次の人が来ると“そろそろ出てください”と言われる。のんびり長湯はできないのです。キッチンが共用の場合も同じです。だれかがキッチンを長時間占有すると、『自分が使えない』というトラブルにもなります。このためキッチンでの調理はさせず、食事は運営側の用意したもので済ませるところもあります」
▼食事は冷凍食品をレンジで温めて出すだけのところも
その場合、食事は各戸に配られるのではなく、食堂に集まって食べるところがほとんどとのこと。朝昼晩の食事で安否確認ができるからです。そのこと自体は利用者にとっては悪い話ではありませんが、実は運営側には別の狙いもあります。
「サ高住の経営者としては入居者の危険やトラブルのリスクをできるだけ避け、より合理的に安定した運営をしたいのです。食事提供はその一環で、利益の向上にもつながります。私が担当するエリアのサ高住の食費の相場は1日3食で約1500円。1カ月で4万5000円から5万円といったところです。もちろん栄養士が高齢者の健康に配慮した献立を考え、味にもこだわった手作り料理を出すところもあります。一方で、冷凍食品をレンジで温めて出すだけのところもあるんです」
サ高住は、施設にはない自由度の高さが魅力だと言われてきましたが、最近は運営側の都合で「管理」される色あいが強まってきているようです。