以前の連載で取り上げたベタ記事やサンムツ広告の類に富裕層が惹かれる理由もそのあたりにあると感じてならない(「広告は『小さい方が良い』のはなぜか」 http://president.jp/articles/-/21539)。また、最近はの富裕層は、証券会社などのプロを通じた投資を好まない。それよりも、「ベンチャーフィランソロピー」なる言葉に代表されるように、プライベートエクイティファンドなどに頼らず、直接、ベンチャー企業に投資して、オーナーとして振る舞いたがる、と聞く。そのあたりにも、普通のプロフェッショナルを見限り始めた富裕層の本音が垣間見えてならない。要するにアマチュアの方が、期待感以上の商品設計やそのきっかけに通じることを提供し始め、それに富裕層が気づき始めた、とも言えるのだと思う。

独立型の人生に必要不可欠な視点

では、今回取り上げたこれらの富裕層の思考パターンをビジネスマンどのように参考にし、取り入れたらいいだろうか?

私なりの答えは2つある。1つは、前述したピーター・リンチ氏の奥さんのような形でビジネスの種を見極める訓練を怠らないことだ。意外に同僚としている他愛もないよもやま話に価値があるかもしれない。たとえば、「このまえ、あの焼き肉屋に2時間ならんで食べたよ」という話だ。そのビジネスが自分に複利の奇跡をもたらすようなビジネスインが考えられないか、という思考回路をいつも持っておくこと、になるだろう。

自分に資本がなければ、資本家を紹介することでビジネスにつながる可能性がある。報酬として株式を一部いただくような一休さん型の交渉をすればいいのだ。そのように考えると複利の奇跡にぐっと近づくのではないだろうか。「主婦目線」で気づく話が多いということは、普通のビジネスマンが気づく話も多いに決まっているのだ。

もう1つは、自分で資本家になってみること。もちろんリターンが最も大きくなる可能性と裏腹にすべてを失うケースもあるだろう。だから資本家の世界にいきなり参入することは薦めない。しかしながら私は、せっかく資本で動く世の中で活躍する皆さんのようなビジネスマンに、資本家になってみることのススメ、を強調したい。投資信託のような商品から入る手もあるだろうが、お金の一部を自分で判断し、自分で現金でないもの=株式など、に変えてみるのだ。責任はすべて自己責任。それゆえ、様々な注意をするようになるし、様々な調査をするようになる。そんな独立型の人生に必要不可欠な視点を身に着けることをお薦めしたいのだ。

現金を株式にするということに抵抗があるなら、このように考えてもいい。「一度投資家サイドにまわってみるかな」と。投資家といっても金額的に大袈裟に考える必要はない。「銀行に定期預金しているそのお金で、その銀行の株式を購入し長期保有してみる」、と考えればいいだけの話だ。この例が適切か否かはともかく、私が数多く接してきた富裕層の思考パターンは間違いなくこれに当てはまる。ぜひ参考にしていただきたい。

増渕達也
ルート・アンド・パートナーズ代表取締役。1992年東京大学卒業後株、電通入社、2002年富裕層向け雑誌の草分けであるセブンシーズを発行するセブンシーズ・アンド・カンパニー代表取締役に就任。2006年富裕層向けライフスタイルマネジメントサービスを手掛けるルート・アンド・パートナーズ設立、現在に至る。2013年にはシンガポールに進出。日本、アジアを中心に富裕層ビジネスを手掛け、富裕層マーケティングに関する造詣が深い。HighNetWorth Magazine編集長、富裕層ビジネス研修商品、富裕層マーケティング研究会、など多数の研修も主宰。
ルート・アンド・パートナーズ(http://www.rpartners.jp
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