男性俳優は「抗弁」しているのに
昨年世間を騒がせたフジテレビが、また騒動を引き起こしている。
事の発端は週刊誌による報道である。同局の連続ドラマに出演していた男性俳優が、共演した女性俳優に対するハラスメント行為に起因するトラブルを起こしたと報じられたのだ。
フジテレビ側はこの週刊誌報道について言及し、男性俳優による女性俳優への発言が「外部弁護士による調査で問題視された」(注1)として、男性俳優に対して厳重注意したことを明らかにした。
ここまでなら著名人によるハラスメント行為が問題になった、という話なのだが、今回はそれだけで終わらない問題に発展している。
この男性俳優が、自身のSNSをはじめとして「抗弁」しているのだ。報じられている事実関係に誤りがあり、自身に問題があるという結論は承服できない、という主旨である。ちなみに女性俳優側の事務所は、フジテレビの発表したことは事実だとコメントしている。
さらにこじれたことに、フジテレビは9月放送予定だったドラマから男性俳優を降板させた、とも報道された。
「事実」をめぐる混沌によって事態は錯綜し、女性俳優に対する誹謗中傷も止まず、男性俳優が無期限で静養するという報道もなされた。
注1:読売新聞オンライン「佐藤二朗さんにフジテレビが厳重注意、制作側の責任は…「共演者への配慮」情報共有あり方を放送業界で議論を」
今回のハラスメント問題は「微妙すぎる」
本件の焦点が「事実認識」にある限り、軽率に本件の是非を語ることはできない。外からは真偽の判断がつかない事実が多く、まだ報道されていない事実もあるだろう。
そこで本稿では、「ハラスメント」をめぐって本件から学びうる教訓について考えてみたい。
まず、ハラスメントにおける事実認定の微妙さ、である。
公開されている情報の限り、今回のハラスメント問題は過去より「一歩進んだ」感がある。両サイドともに、「専門家の意見」を参照しているのだ。
フジテレビ側は「外部弁護士による調査で問題視された」ことを理由に男性側を処分したと述べ、いっぽうで男性俳優側の事務所は「専門家からも男性俳優の言動がハラスメントにあたるものでないと、確認を得ています」と公式サイトの声明文で主張している(注2)。
そして両者ともに「専門家」に意見を乞うているにもかかわらず、結果的には真逆の主張になっている。
加害者側が事実を認めているケースならまだしも、少なくないハラスメント事案はこのような展開になるのではないか。つまり、判定が「微妙」なのである。どの立場からどの情報を得ているかによって、専門家でも意見が分かれてしまう。
注2:フロム・ファーストプロダクション公式サイト「弊社所属俳優 佐藤二朗に関する一部報道について」

